「約束〜この腕の中の金色の輝き」



「もう、やめないよ」

 そう告げられて、直人の体の下、昇は小さく頷いた。

 唇に落ちてくる優しいキスに、身体が反応してしまう。
 今までも、キスなら何度もした。
 昼間の学院の中、直人の部屋で何度も何度も。

 大人ぶって、慣れたふうに応えてきた。
 何でもないと見せかけてきた。

 いつも泣きたいほどに切なかったのに。


 ゆっくりとシャツを開く。

 柔らかい唇から離れ、白い首筋を通り、昇の香りを楽しみながら胸へキスを落とす。

 少し動かすたびに、敏感に揺れる昇の肢体。

 暴走したくなる自分を叱りながら、殊更にゆっくりと追い上げる。


 焦らされている…?

 たまらない。
 体中が熱を持って、『もっと』と声を上げている。

 想い続けた人の腕の中は、こんなにも熱く、狂おしい。

「…く…っ」
 小さく喉が鳴る。

 徐々に強くなる刺激に、意識が時折白く霞む。
 けれど、気を失ったりしたくない。 
 やっと手に入れたものを最後まで見届けたい。

 もう、誤魔化されたくないから。


 必死で耐えているのが伝わってくる。

 追い上げ、追いつめても、必死でしがみついて自分をとどめようとしている。

 なぜ?

 傷つけたくない、辛い思いをさせたくないから、できるだけ意識を飛ばしてやりたいのに…。

 昇…なぜ、すべてを委ねようとしない?


 流されてしまう…っ。
 思わず自分の手の甲に歯を当てて、強く噛む。

「昇…」
 優しい声が呼んでくれる。

 歯形のついた手を取られ、10本の指が絡み合う。

「どうして? …私にすべてをくれるのではなかったの」

 悲しそうな瞳が覗く。

「置いて…行かないで…」

 どこまでも連れていって欲しいから、目を開けていたい…。

 滲んだ涙で直人の顔が霞む。 

 泣きたくない、泣いたら見えない。見えなくなってしまう。

「置いてなんか行くもんか。昇はずっとこの腕の中にいるんだ」

 強く抱きしめられて、身体が震えた。

「約束しただろう?ずっとお前だけをみつめてるって」

 本当に? …本当に?

「目を閉じて。私を信じて、すべてを任せて」
 




 わずかに力の抜けた昇の身体を、直人は再びゆっくりと拓いていく。

 長い想いを超えてきた二人が、やっと一つになったとき、直人は初めて口にした。

「愛してる」……と。



 


END


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