管理人の体験談

〜スタジオはコワイ〜


 


 あれは大学の頃か、それとも卒業したての頃か…。
 私はとある録音スタジオで、レコーディングを行っていました。

 その録音スタジオは、『出る』という噂のところでしたが、生憎私はそっち方面にはとんと疎く、それまでにもこれと言った『霊体験』などなかったので、さほど気には留めていませんでした。

 当時の私は、まだ真面目にヴォーカリストをしていたので、その日の録音も、『歌』の収録だったのですが…。

 どうも、私の声の下に、何かが聞こえて来るんです…。
 ハモっているような、ハモってないような…。
 気になったので、録音を中断してもらって、PAさんにたずねました。

『何か聞こえませんか?』

 けれど、PAさんもピアニストも、何も聞こえないって言うんです。
 そう言われてしまうと、私ももう何も言えず…。
 
 こうしてあまり集中出来ないままに録音が進んでいきました。

 そうして、そろそろ休憩かな…?と、思った頃…。

 私の後ろを、誰かが通っていったんです…。

 ドアも何もない壁から、スタッフがいる部屋の、ドアに向かって。

 もちろん、後ろを通ったのですから、私にその人が見えたワケじゃないのですが、確かに人が通ったのです。
 その人は、真夏だというのに、トレンチコートを着込み、帽子を目深に被り、アタッシュケースを下げていて…。
 

 はっきり言って、あまりに鮮明なイメージだったので、かえって怖いという気が起こらないほどでした。
 振り返っても見ても誰もいなくて、硝子の向こうのスタッフも見知った顔しかいなくて…。

 その時、ピアニストが「どうしたの?」と聞いてきたのですが、私には何とも答えられず、「ううん、何でもない」と言うしかなかったのです…。



 そして、いつもより時間がかかった録音も何とか終わり、編集作業のあるスタッフの方はそのまま残り、私とピアニストは食事に行きました。


 そこでピアニストが言いました。

「私、録音中に変なもの見ちゃって…」
「え? 何を?」
「笑わない?」
「うん、笑わない」
「あのね、男の人が壁からドアへ通って行ったのよ。トレンチコート着て、帽子被って、アタッシュケース持った人…」

 笑わないって約束したのに、笑ってしまいました。
 あまりに怖くて……。
  

 そして翌日。
 スタッフから『録り直します』と電話がありました。
 録音中には気付かなかった『雑音』が入っていたそうです。
 


 その後、ずいぶん経ってからその時のスタッフに聞きました。

「実はあの時ね、ヴォーカルの下にもう一つ声が入っててねぇ…」








 この話はここで終わりですが、『楽屋』と言う場所も怖いです。
 物が勝手に移動したり…なんて、日常茶飯事。

 霊感の強い、私の友人は
『舞台袖へ上がる階段に、女の人がうずくまってるから怖くて通れない』
 な〜んて言いますからねぇぇぇぇ…。
 
 


悟くん同様、 『絶対音感はあっても、霊感は皆無』と、
家族・友人一同が声を揃えて言ってくれる私でさえ、
こんな目に遭えるのが『楽屋』とか『録音スタジオ』です。
皆様も、ご注意あれ…。

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