君の愛を奏でて

6月1日衣替えスペシャル!
『とある二の腕フェチの朝』




 6月1日。
 古来から日本はこの日に季節の変わり目を据え、『衣替えの日』としてきた。

 制服も今日から半袖のカッターシャツになり、ブレザーを着用しなくてもいいことになる。

 そう! 二の腕の季節だ!




 昨日は雨が降り、猛烈な湿度の所為で不快指数はうなぎ登り。

 校内は長袖のカッターシャツをまくり上げてもなお、暑さに辟易した顔で溢れていた。

 それがどうだ。

 今日は気温の上がり方もさほどではなく、湿度も昨日に比べると格段に低い。

 みな、嬉しそうに半袖カッターシャツの涼しさを満喫するのではないだろうか。




 始業20分前。そろそろ皆が寮からの坂道を下ってくる頃だ。

 どれどれ…。

 お。あれは悟くんではないか。

 相変わらず美しい。

 おお、後ろから追ってくるのは弟の守くんだ。
 こちらもタイプは違うが美形であることには変わりない。

 この兄弟は相変わらず登校が早い。いい心がけだ。

 ふふっ、二人とも半袖だ。そして二人とも相変わらずいい二の腕をしている。

 スポーツで鍛えたようなそれではなく、楽器を奏でるしなやかな二の腕は、太すぎず細すぎず、実にいい筋肉の付き方をしている。

 ん? 後ろから走ってきて二人に声を掛けながら追い越していったのは、森澤くんだな。

 今日は朝練はなかったのか。

 それにしてもこの子もいい二の腕だ。
 今夏もインハイでいい成績を収めてくれるであろう彼の二の腕は、さすがにスポーツマンの筋肉が付いているが、それでも元々華奢な彼の腕だけあって、これ見よがしでないところがいい。


 ああ、藤原くんがやって来た。

 この子には、学年が違うと言うのにいつも初瀬くんがくっついているな。
 
 まるでハイジとヨーゼフのようじゃないか。
 いや、ネロとパトラッシュか。
 待てよ、アメディオとマルコか………ちょっと違うな。

 いずれにしても、いつも初瀬くんが藤原くんを守るように側にいるのだが……おっと危ないっ。

 藤原くんは何もないところでよく躓く。
 今も危ないところを初瀬くんが助けたわけだが…。

 ううむ。中1とは思えない二の腕だな。
 顔つきも男らしいし、成績も優秀。将来有望だ。

 それにしても、藤原くんはまだ小学生のような二の腕だな。
 もう少し食べた方がいい。
 そうだ、今度学食で見かけたら、お膝抱っこで食べさせてやろう。


 お? おおお! 奈月くんだっ。今日も浅井くんと仲良く登校だな。

 うーん。浅井くんのしっかりとした二の腕も捨てがたいが、やはりあの奈月くんの細くて白くてしなやかな二の腕っ!
 まさに聖陵の至宝と言ってもいいだろう。

 やっぱり制服は半袖に限る。冬なんてこなけりゃいいのに。



 おっと、しまった。もう一人聖陵の宝物がいたぞ。

 金色の天使は今日も遅刻ぎりぎりのお出ましだ。
 相変わらず可愛らしい。

 彼は数週間前に足を骨折したのだが、さすがに若いだけあって――単純骨折だったことも幸いだったのだが――すでに全快して来週からは体育の授業にも復帰できるらしい。


 しかし、光安くんには一度注意しておかねばならんな。

 これからは制服の襟も開きがちになる。
 見えるようなところに蹟を付けるなど以ての外。
 彼はあの二の腕だけでも狼どもの欲情を誘ってしまうと言うのに、その上真っ白な肌についた真紅の花びらなど見せては、狼を増殖させるだけではないか。

 ついふらふら〜っと、昇くんをどこかに連れ込んでしまうような輩が現れたらどうするつもりなんだ。…ったく。

 あああ、ほら、昇くんがネクタイを緩めて第一ボタンを外したじゃないかっ!


「あれは赤坂良昭の次男だな」

「うわあっ、春之っ。お前いつの間に…っ」

 いつの間にか、同期で親友の前田春之が背後にいた。
 あー、びっくりした。


「何を寝ぼけたことを言ってる、祥太郎。今日は理事会だろうが。この忙しい私を朝っぱらから呼びつけたんだ。それなりの楽しみがないと割にあわんだろうが」

「あのな〜」

「ううむ。美少年は黒髪に限ると思っていたが、金髪もいいものだな。おまけにあの二の腕の眩しさときたら」


 …しまった。こいつも二の腕フェチだったのか…。

 やっぱり、こいつを理事会に招聘したのは間違いだったのだろうか…。



END

いや〜、申し訳ありません。智パパまで来ちゃいましたが(笑)
聖陵学院長、初の一人称での登場でした(^^ゞ
実は彼、館林祥太郎(たてばやし・しょうたろう)さんといいます。
中高時代は「受け」でした(おおっ)
そのうち別の話にもチラッと出てくる予定ですのでよろしくお願いします。

さて。
私は方々で自分が『制服フェチ』であることを吹聴して回っていますが、
実は『二の腕フェチ』でもあるのです。
適当に筋肉のついた張りのある二の腕を見ると、脳内アドレナリン大放出です(おい)
あ、でもね、白い腕でないとヤなの〜(アホ)
え? 嫌いな二の腕?
そりゃあ、自分の二の腕でしょう…(涙)

ちなみに。
昇きゅんの胸元の『痕』は、単なる虫さされです(笑)


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