君の愛を奏でて
超おバカSS
「私はシャーペン」
あら。初めまして、こんにちは。 私はシャーペン。正式な品名はシャープペンシルね。 固有名詞もあるのよ。『A.N』っていうの。 っていっても、これは私の腰のあたりに彫られているイニシャルなんだけどね。 ネーム入りっていうだけでもわかってもらえると思うけど、私、そのあたりのコンビニで売ってるシャーペンとは違うのよ。 どう?見て、このスリムなライン。 見た目すっきり。でも、人間工学に基づいて握り易さを追求してるんですって。 それとこの色にも注目ね。 深いラピスブルーで全体をしっとりと覆って、ほら、肩の所には金色の飾り文字で『S』って入ってるの。 これはね、私が正真正銘、ここでしか売られていないレアな逸品だっていう証しなの。 え?それでも大量生産だろうって? まあ、それはそうだけどね。 でも、その中でも私はちょっと違うの。 だって、私のご主人様は、ここで一番有名な人なんですもの。 私の腰のあたりに彫られてるイニシャルは、彼の名前なの。 そうそう、ご主人様が私を買いに来てくれたときのこと、とってもよく覚えてるわ。 その時30本ほどペン立てに入れられていた私たちの仲間の中で、ご主人様は迷うことなく私を手に取ってくれたの。 そして、ご主人様のイニシャルを彫ってもらって…。 それから私はずっとご主人様と一緒。 消しゴムさんや、ボールペンちゃんなんかはペンケースに入れられて教室の机に置き去りだけど、私だけはいつもご主人様のブレザーの内ポケットに入れてもらってるわ。 それだけじゃないの。 私、ご主人様とキスまでしてるんだから。 ご主人様ったら、授業中やテスト中に私の頭に温かい唇で触れてくるのよ。 ときどきぺろって舐められちゃう事もあるわ。 囓られちゃう事もあるけどね…。 そんな風に、優しくて綺麗なご主人様の内ポケットでぬくぬくしていた私なんだけど、ある日突然別れがやって来たの。 それは、寒い午後だったわ。 その日も私は内ポケットでうとうとしていたんだけど、急にむぎゅっと圧迫感を感じて目を覚ましたの。 あ、これはよくあることなのよ。 そうね、だいたい放課後にはこう言うことがあるかしら? たいてい、ピアノ…っていうの? その楽器の音が聞こえた時なんだけど。 圧迫感が消えた後、だいたいはまた普通に戻るんだけど、その日は違ったの。 私は突然内ポケットから引き抜かれて、ご主人様の手から、違う人の手に渡されたの。 そして、入れ違いにその人の手から、私の仲間がご主人様の手に渡されたわ。 そして、私たちはそれぞれ今までのご主人様とは違う人の内ポケットに…。 一瞬叫んでしまいそうになった私なんだけど、今度のご主人様の内ポケットも温かくて、そして今までのご主人様の香りもするものだから、すぐに馴染んでしまったわ。 きっと、私と交換されちゃった仲間も同じことを考えてると思うの。 そうそう、その仲間なんだけど、腰のあたりに彫られたイニシャルは『S.K』だったかしら? チラッと見えただけなんだけどね。 こうして私にはまた新しいご主人様との毎日が始まったんだけど、今度のご主人様も、私を大切に内ポケットに入れて連れて歩いてくれるの。 ただ、新しいご主人様は私をクルクル回すクセがあるから、私はちょっと目がまわっちゃったりするんだけど…。 でも、夜、お部屋でお勉強中のご主人様は、よく私を見つめて微笑むのよ。 そして、腰のあたり――そうね、前のご主人様のイニシャル『A.N』が入っているあたりかしら――に、chuってしてくれるわ。 それは、前のご主人様が私にしてくれたキスとはちょっと違って、なんだか甘酸っぱいの。 それにね、今度のご主人様も、めっっちゃ美形なのよv うふふv 私って幸せなシャーペン…vv |
END |
すみませんっ(新年早々平謝り)
バックで戻って下さい〜v