直也と渉のお初物語。
『直也とわん!』
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あの最初の夜の、次の次の土曜日。
「ちょっと、慣れたかな?」
少し笑いを含んだ声で、直也が言う。
その右手は渉の肩をしっかり抱いていて、2人は直也のベッドに腰掛けている。
「えっ?…ええっと…」
慣れてなんかいるはずもないのはわかっている。
なんだかちょっと苛めたくなってみただけで。
「ふふっ、大丈夫。慣れてなくてもすぐ気持ち良くなれるから」
耳朶を甘噛みしながらそう言うと、細い肩が小さく震える。
そんな何気ない様子ですら、直也の胸をキュッと掴む。
それなりに経験を積んで、それなりに余裕もあった。
なのに、今まで感じたことがないほどの鼓動が痛いくらいで、自分の心臓の音が耳にうるさい。
「わあっ」
堪らなくなって、左手で渉の膝を掬い上げ、膝抱きしてそのまま腕の中に囲い込んだ。
「いい匂い…」
シャンプーとボディソープの香りだけでない、ふわりと甘い空気がいつも渉の側に在るような気がして、その匂いに直也はいつも陶然としてしまう。
『直也は匂いフェチだな』
そう言って桂は笑うけれど、桂だって『渉はいつもいい匂いがする』と言っているクセに。
渉が小ぶりな頭を直也の肩に寄せてきた。
嬉しくてきつく抱きしめてしまう。
そして、そっと唇を寄せて、渉のしっとりとした薄い唇を啄んで、そのまま繋がりを深くする。
奥で小さくなっている舌先を探り当て、少しだけ強く吸い上げると、身体が大きく揺らいで、細い指が直也の腕をギュッと掴んだ。
たったそれだけの仕草に、心も掴まれる。
『最初の夜は3人で』
そう言い出したのは、どちらからでもなかった。
ただ、それが自分たちの関係の中では自然な気がして、その本能に従ったまでで。
そして、どちらが渉の最初の相手になるのかという話になったとき、桂は言った。
『渉の身体の負担になるといけないから、直也が先に…』と。
自分は男の子の身体の扱いに慣れていないから、万が一にでも渉に傷を付けては…という配慮なのはすぐにわかった。
桂らしい優しさ…だと思った。
そして、 2人は戸惑うことなく、渉の両手を取って、最初の夜へと踏み出した。
口づけたまま、片手で渉のパジャマのボタンを外す。
こんな行為に手慣れているのは、多分あまり誉められたことではないと自覚はしている。
だが、遊んでいたつもりはさらさらなくて、その時々にはそれなりにマジだった。
ただ、好奇心が先立っていたかも知れないという事実はあるし、だからなのか、気持ちはやっぱり続かなかった。
それは相手も同じだったようで、『別れ』は当然の帰結だった。
けれど、その後もそれぞれ『先輩と後輩』、『同級生』として普通に接することができているから、あれはあれで良かったのだと思うことにしている。
『ま、大人への階段ってやつ?』
そう言っておどけた見せたら、桂は『アホか』と、ネイティブ関西弁で笑いながらデコピンをお見舞いしてきたけれど。
開いたパジャマの下は、吸いついてくるほどにきめ細かく白い肌。
元気盛りの高校生とは言え、インドアの部活だと日に焼ける機会は少ない。
けれど、体育や校内で移動するだけでも多少は日焼けした夏の名残がまだあってしかるべきなのに、渉にはそんな跡はもうなくて、腕も身体も柔らかい象牙色。
膝抱きのまま渉の身体を少し倒して、胸に唇を寄せる。
先週、桂に愛された跡は、見る限りでは残っていない。
肌が綺麗過ぎて、出来なかったのかもしれないな…と思った。
今、自分がそうだから。
だから、そっと舐めて、柔らかく食んで、肌の甘さを堪能して。
けれど、そろそろ余裕はなくなってきている。
『いや、もうなんてーの? タマシイ丸ごと持ってかれたって感じ?』
『初めての2人きりの夜』を桂に任せた翌朝、『どうだった?』と尋ねたら、返ってきたのがこんな返事だった。
『渉のスキルアップもへったくれも、俺がスキルアップさせられたって』
そう告白する顔には幸せが溢れていて、どれだけ渉に溺れた夜だったのか、簡単に想像がついてしまう。
『ま、直也には余裕があるだろうけどさ』
ほんの少し自嘲気味な様子で笑って見せた桂だったが、自分も同じだ。
渉の体温を側に感じただけで身体が熱くなるほどなのだから。
ベッドに横たえた渉に覆い被さり、キスをしたまま身につけているものを剥いでいく。
ついでにあちらこちらを撫でて煽りながら。
土曜の夜は長い。
翌朝の心配がいらないから。
だから、何度でも溺れたいし、溺れさせたい。
何度もあちこちにキスを繰り返し、兆してきた渉の中心を捉えて優しく煽る。
「ふ…ぁ…」
渉の空いていた手がシーツをキュッと掴んだから、その手を取って自分の首に導くと、堪えきれない様子でしがみついてきた。
熱くて甘い息が耳を掠めた瞬間、直也の『余裕メーター』の針はいとも簡単に振り切れた。
「わたる…ちょっと腰あげて」
うつ伏せに転がして背後から掬い上げ、膝を立てて伏せた状態にさせて、覆い被さる。
「な、なおや…?」
何をされるのかわからなくて、戸惑っているのだろう。
「大丈夫。こうやってほら、抱きしめていたら怖くなんかないだろう?」
背中にぴったりと張り付いて、回した手で胸の先を柔らかく撫でると、渉の身体から力が抜け落ちて、身体が崩れそうになる。
それをまた、背後からしっかりと抱きかかえると、後ろにそっと、ジェルを纏わせた指を這わせる。
しっかり抱きしめている所為で、崩れ落ちることはないけれど、身体が硬くなったのがわかった。
まだ慣れない行為に、知らず身体が防衛状態になるのだろう。
「大丈夫だから、少し力抜いて」
耳に小さく囁く。
「…う、ん…」
何とか返事はしたものの、やはりそう簡単には身体も言うことを聞いてくれない様子なのはわかるのだが、情けないことにこっちも余裕はない。
けれど事を急いで身体に傷をつけるなど以ての外だから、わからないようにそっと呼吸を整えてから、慎重に渉の身体に指を侵入させた。
「あ…っ」
堪えきれずに漏れただろう声が、可愛らしすぎて眩暈がした。
「わたる…大好きだよ」
自分でも、こんな声が出せるんだと思うほどに甘ったるくて欲情に掠れた声。
多分それは渉にも相当の威力を発揮したようで、細い身体が震えた。
「ごめんな。無理させて…」
そう言いつつも、渉の身体を拓く行為は止められなくて。
「…なおや…」
「ん? 辛い?」
少し不安げになった問いに、渉は小さく首を振った。
「だい…じょうぶ…だから、すきに…して」
漸く…の様子でそれだけ言うと、後はもう熱い吐息しか漏れてこない。
「…渉…っ」
背後から隙間なくぎっちりと抱き込み、直也は渉の身体に自身を埋め込んで揺さぶる。
あまりにも幸せな快楽に、このまま時が止まってしまえばいいのにと思うほどで。
そう言うと、桂は怒るだろうけど。
すぐ見えてきそうな頂点を何度かやり過ごしながら、後ろからだと動きやすいけど、表情が読めないのが難点だよな…と、何処かで冷静に分析している自分がいて、でもすぐその端から、2ラウンド目は前からだな…なんて、『今夜のメニュー』に脳幹まで爛れながら、直也は渉に溺れていった。
END
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ハートになにやら隠れてる…?
*戻る*
朝永明ちゃんにいただきました!
ある夜の3人です( ̄ー ̄)
直也と桂は、いつもとても僕に気を使ってくれる。
どれくらいかと言うと…。
特に何かあったわけではなく、何となくぼんやりと目を開けていたら。
「痛い?」
「苦しい?」
2人が動きを止めて僕の顔を覗き込んで聞いてきた。
「だい、じょ…ぶ。続け、て」
そう言ったのに、2人とも静止したまま動かない。
「ど、した…の?」
この半端な状態で留め置かれる方が僕は苦しいんだけどっ…
「渉、ゴメン」
「お願いだから、何もないとこ凝視するの勘弁して」
「えっ??」
何を謝罪され、願われたのかさっぱりわからなくて目を見開いて交互に2人を見たら。
「しばらく、こうしてて」
視界が暗転した。
目元を何かで覆われたらしいことはすぐにわかった。
けれど、見なくてもどちらが喋ってるかは絶対わかるし。
どちらが触れてるのかも、わかる。
つもりだった…のに。
ゆるゆると抽挿されながら激しく胸の蕾を捏ねられて。
「そこっ、もうダメぇっ」
前面にいる桂に懇願したら。
『そこは俺』
背後から直也に囁かれた。
「え、え? うそ、だって…あんっ」
『こっちが俺』
背骨を1つ1つ数えるようにもどかしい刺激で撫で下ろしながら耳を甘噛みされて。
「は、ぁっ」
同時多発的に与えられる刺激に酔っていたら、
こちらも忘れるなと言わんばかりに中を激しく擦られて。
あまりの刺激に首を横に振って快感を逃そうとしたら。
それすら許さないとばかりに頬が掌で押さえられて。
「ん、んっっ」
吐き出したかった声は全部吸い取られて……意識が途切れた。
『見ない』と、『見えない』。
視覚的には同じ状態なのに、似て非なる状態なのだと思い知った。
おしまいv
めいちゃん、さんくす☆