君といつまでも



 僕にはあまり誕生日の思い出というものがない。

 僕を女手一つで育ててくれた母は、僕の誕生日を一応覚えていてはくれたものの、仕事で忙しかったせいもあって特別に何かをしてくれるということは殆どなかった。

 母が亡くなった後に僕を引き取ってくれた伯父夫婦は、決して僕を邪険に扱っていたわけではなかったけれど、かといって誕生日を覚えてくれている程でもなかった。

 いつの頃からか僕は、他の子のように自分の誕生日に特別な何かを期待するということをしなくなってしまった。
 期待して、でもそれが裏切られるのが一番悲しいから。

 16回目の誕生日の今日も、普段通りの生活を送った。
 いつものように学校へ行き、買い物をして帰って、夕食の支度をして。

 だから、夕食の支度がほぼ終わる頃に帰ってきた彼が、大きな箱と、ケーキが入った小さな箱を僕に差し出したときには、それが自分にだなんて最初思わなかった。

 彼と僕とは、事情があって半年ほど前から一緒に暮らしている。
 でも、誕生日のことなんて話した覚えはなかった。

「誕生日おめでとう・・・今日、誕生日じゃなかったっけ?」
「そうだけど・・・、でも、」
「でも、何?」
「どうして今日が誕生日だってわかったの?」

 そう訪ねると、彼はちょっと赤い顔で、言いにくそうに、
「この前の夜・・・『そういえば誕生日っていつ?』って聞いたら今日だって言うから・・・」

 この前の、夜・・・?

「あ」

 それがいつのことを指すのか思い当たる。
 そういえばそんなことを聞かれたような気がする・・・ぼんやりしててよく覚えていなかったけど。

 あのときのことを思い出してしまい、恥ずかしくて下を向いてしまった。
 そんな僕をそっと引き寄せ、優しい腕で包み込んでくれる。

「これから毎年、誕生日を祝わせてくれるかな」
「毎年ずっと?」
「毎年ずっと・・・二人がおじさんになっても、おじいさんになっても」

「それってプロポーズみたいだね」って笑ったら、「みたい、じゃなくて、プロ
ポーズだったんだけど」ってちょっと怒られた。

 16回目の誕生日。
 きっと僕は、今日のことを一生忘れない。

 そしてこれからは、幸せな誕生日の思い出を作っていける・・・二人で、ずっと。


END

いちごさまから、40万&誕生日(誰の?/笑)お祝いにいただきましたv
こういうSSがさらっと書けるっていいですね〜。
さて、彼らはどういう事情で一緒に暮らしてるんでしょうか?
この前の夜って?! あのときって?!
ああああああ。妄想が一人歩きを始めてしまいますぅぅぅ(おい)
彼らのほかのエピソードも食べてみたい、もも♪でした(笑)
いちごさま、ありがとうございましたv 

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