航平へ

お前がこれを手にするとき、きっと俺はこの世にいない。
突然のことで動揺しているだろうか。
何もかもぶち壊して先に逝ってしまうバカな兄貴を許してくれ。

2日前、悠人の都合が悪くなって、来られないと言ったのは嘘だ。
悠人は来た。お前に会いに。
俺はもう一つ嘘をついた。
お前が悠人を俺に譲ったと言った。
そして、絶望した悠人を無理矢理抱いた。
悠人はお前に捨てられたと思っている。
だから、行ってしまったのだろう。

俺がずっと悠人を思ってきたのは本当だ。
悠人が卒業したら、うち明けようと思ってきた。
けれど、その前にお前達に変化が起こってしまった。
俺は焦ったんだ。
手に入れた手段は卑怯だったが、それでも俺は悠人が好きだ。
この2日間、お前が悠人を待ち続けたように、俺は悠人を探し続けた。
そして、今朝、アメリカへ行ってしまったと聞かされた。
俺はようやく、手に入れたのは悠人の身体だけだった事に気がついた。
心を手に入れているのは、航平、お前だったって事にも。

俺は悠人の体と心を傷つけ、慕ってくれたお前の信頼を裏切った。
この始末は自分でつける。
だから、許して欲しい。

お前に頼みがある。
悠人を迎えに行ってくれ。
悠人はお前に裏切られたと思っている。
それでも、最後までお前の名を呼んでいた悠人を、幸せにしてくれ。
頼む。

亮平