きみにすべてを
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ふと、腕の中の温もりが身じろいだ。 広いベッドの中、僕が背中抱きしているのは、何よりも大切な…僕の半身…僕の弟…僕の恋人。 触れ合う素肌の、しっとりとした温もりが心地よい。 この子は、一度熟睡してしまうと半端なことでは目を覚まさない。 今だって…。 こうしてクルッとひっくり返して正面から抱いても…ほら、ぐっすりお休みだ。 そろそろ夜が明け始める。 クリスマスの朝だ。 昨夜降り始めた雪は、積もっているだろうか? この静けさは、一面の銀世界を思わせる。 昨日まで僕たちはとても忙しかったし、今日は家族と、そしてたくさんのお客さんを呼んで、パーティーがあるし…。 僕たちが、初めて一緒に過ごすクリスマスなのに、なかなか2人っきりで…って言うわけにいかないね。 でも、この子はとても嬉しそうだ。 たくさんの愛に囲まれて、いつも日向のように微笑んでいる。 みんながこの子を大切にする。 僕はもっともっと大切にする。 誰の手にも触れさせたくないくらいに…。 だから…。 僕はそっとキスを落とす。 艶やかな黒髪に、敏感な耳に、柔らかい頬に、滑らかなうなじに、小さな顎に、可愛い鼻に、そして…、僕を待つその唇に…。 優しく唇を吸って、中で待つ甘くて柔らかい舌を、そっと舐めてみる。 そうすると、この子はほんの少しだけ、小さな声を出す。 もう少し奥まで舐めてみる。 今度は身体が小さく揺れた。少し息が乱れる。 起こすのは可哀相だから、もっと深くしたいキスを我慢する。 しばらく背中を撫でてやると、また規則正しい呼吸に戻って、眠りを深くする。 僕はキスをだんだん身体の下へ移動させる。 静かに、ゆっくりと。 胸をそっと舐めると、また小さく喉が鳴る。 ここにはあまりかまってやれない。 いくらこの子でも、きっとすぐに目を覚ましてしまうだろうから。 僕はそのまま華奢な身体を抱きしめて、そっと胸に耳を当てる。 静かに、けれど確かに打つ、命の証、この子の鼓動。 それを聞くと、僕はいつも泣きたいくらいに安心する。 一度失いかけた命だから。 あの時、血を分けた兄弟でありながら、僕はこの子に血をあげることが出来なかった。 僕はA型、この子はO型。 『今夜が越せるかどうか…』 医師にそう告げられたときの恐怖は、今でも僕の中に残っているから、こうして夜中に目が覚めると、僕は必ずこの子の鼓動を確かめてしまう。 そして…。 僕は少しずつ狂っていく。 誰よりも、何よりも大切にしたいと思う心の裏で、誰にも渡さない、心も体も僕のものだという醜い独占欲。 高く飛ぼうとするこの子の精神に、置いて行かれまいと、あがき、不安の中で捕まえて、最後は自分の自由に、この小さな体を蹂躙してしまう。 身体の中をどろどろと渦巻く欲望に負けて。 また、そっと、キスをする。 今度は、ひっそりと眠る、この子の中心に。 キスがそのまま暴走しそうになったとき、小さな声がした。 「ん…あ…」 反応を始めた身体に、僕の身体も忠実に応えてしまう。 そのままきつく、細い腰を抱きしめて、この子の熱を解放させてやるべく、深く激しく愛していく。 やがて、絶え間なく、短く響く小さな啼き声に、僕はこの子の完全な覚醒を知る。 「…あっ…」 解放された熱を受け止めてから、僕はこの子の身体をうつ伏せにする。 「ごめん…寝かせてあげようと思っていたのに…」 情けない言い訳の言葉を、形ばかりに吐いて、僕は耐えきれなくなった熱の固まりを押しつける。 「う…ぁ…」 僕の下の小さな身体は、突然訪れた最初の衝撃を、枕を抱きしめて耐えている。 「ごめん…許して…」 暴走してしまう。 どうしても止められない。 何故? この子を壊してしまってもいいのか…? 少し後、息を詰めて耐えていた身体が、ほんの僅か弛緩した。 枕に顔を埋めたまま、くぐもった声が聞こえる。 「大丈夫…だよ。僕は……」 まるで、僕の心を読んだかのような言葉に、全身の血が、逆流する。 「だから…思うように……あい…して…」 「どうして…どうして我慢する? どうして怒らない? 僕は…こんなにも無茶ばかりするのに…」 僕は動きを止めて、腕の中の温もりをギュッと抱きしめる。 「…僕を…離さないで欲しいから…ずっと、傍にいたい…から」 その言葉を聞いたとき、荒れ狂っていた僕の中の欲望が、自然に姿を変えた。 心も体も丸ごと欲しい。 そう思うことに対する、気恥ずかしいほどの喜び。 醜いほどの僕の欲望ですら、この子は微笑んで包んでくれる。 それならば、僕も、心と身体のすべてをこの子に捧げよう。 「僕も、離したくないから…ずっと傍にいたいから、こうして…」 僕が動き始めると、また小さな声が上がる。 今度は少し濡れた声が…。 「好き…?」 「す…き…」 「大好き…?」 「だい…す、き」 「愛してる…?」 「だれ…よりも…」 Merry Christmas,Aoi………. 僕から君へのプレゼント、それは、これからの僕のすべて…。 そう、いつまでも、二人は、ひとつ…。 |
END