君の愛を奏でて

「僕と彼との愛しい関係」
おまけ
僕と彼とのナイショな関係





「あ、えっと、大丈夫、あのっ、一人で、入れる、から」

 ひとしきり…というか、随分と長いキスの後、アニーは僕を抱き起こして、シャワーを浴びようって言った。

 しかも一緒に。

 そりゃあ、寮にはでっかいお風呂もあって、そっちもしょっちゅう使うから、男子学生同士、裸を見られたところで別になんともない…はずなんだけど。

「ダメダメ。司の体を傷つけないように、しっかり準備しなきゃだめなんだから」

 真顔で言うアニーに、僕は二の句が継げない。


 …準備って……何。

 いや、薄々…というか、それなりに…というか、そこそこは…というか……ぶっちゃけ想像はしっかりついているわけだけど、それが僕の身に降りかかってくるかどうかと言うのは、また別次元の話だ!


「や、あの、大丈夫だよ?」

 って、自分で準備出来るのかって言われても、出来るわけないけど。


「恥ずかしがり屋さんだね、僕の司は」

 って、ニコニコしながら言わないの。
 だいたい、普通は恥ずかしいだろ、普通はっ。


「はい、おいで」

 って、手を出されても、ハイそうですかというわけには…

「わあっ」

 いつまでも壁際でグズグズしている僕に、アニーは待ちきれなくなった様子でいきなり手を引いて僕の体を閉じ込めた。

「大丈夫。僕に全部任せてればいいから」

 …だから、それが恥ずかしいって言ってるのに…。



 それから、ポイポイと手際よく服を脱がされて、体が密着した状態で、僕とアニーは暖かいシャワーの下にいる。

「司、綺麗だね」

 ボディソープを泡立てたアニーの手が僕の背を巡る。

 だから、なんでそういう恥ずかしいことを…。

 って、ちょっとは口にして抗議しようと思ったんだけど、アニーの手の動きがあんまりにも妖しすぎて、口を開けばうっかり変な声が出そうで、結局なんにも言えないまま。


「ちょっと背中向けて」

 くるっとひっくり返されて、今度は背後から抱きしめられた…んだけど。

「…えっ。うわっ」

 するっと滑ったアニーの手に、大事な部分を握りこまれて、驚いた僕の口から次に出たのは…。

「やっ…あ、んっ」

 なんて、出した本人が赤面するような声だったりする。

「司…」

 耳に触るアニーの息が熱い。

「…可愛い」

 …だから、そう言う……。あ、ダメだ…ぼんやりしてきた…。

 初めて与えられる他人からの刺激に、僕は翻弄されてしまって、立っているのもやっとで、ほとんどアニーに抱きかかえられた状態のまま。

「…や…、も…だめ…」

 限界が見えてきて、思わず捩った体をまた抱きしめられて、僕はそのまま、あっけなく頂点まで連れて行かれてしまった。


「司、こっち向いて」

 息をつく間もなく、またくるっとひっくり返されると、今度は熱いキス。

 ふと気がつけば、密着した体の間で、アニーもこれでもかって言うくらいに自己主張してて、僕はその現実に沸騰しそうになった…んだけど。


「ごめんね、司。ちょっと我慢して」

 どこか少し、切羽詰まった声がしたかと思うと、アニーの長い指が僕の背中をすっとなぞって、僕の内側に、するっと滑り込んできた。

「…っ」

 ちょっと引き攣れたような圧迫感。

「…痛い?」

 心配げに尋ねてくるアニーに、どうにか首を横に振って見せたんだけど…。

 確かにまだ、痛くはないけど…でも…。

 何とも言えない感覚に、僕はもう、アニーにしがみつくことしかできない。

 でも、しがみついている間にも、どんどん圧迫感は増えていって…。


「アニー…」

 この、辛いのかそうでないのかよくわからない、もどかしい感じを何とかして欲しくて、僕を追い詰めている本人を見上げて呼んでみたら、情けないほど掠れた声が出てしまって、もっと恥ずかしくなった。

 でも、そんな僕の目に写ったのは、恐ろしいほど真剣な顔をしたアニーで。

 シャワーのお湯が、止まった。


「…ベッドに行こう…司」

 ふかふかのバスタオルにくるまれて、抱き上げられて、運ばれたのはアニーのベッド。

 濡れた僕の髪を拭きながら、休みなくアニーの唇が僕の頬から首、そして胸へと降りていく。

 何度も僕の名を呼びながら。

 そしてまた、アニーの指が、僕の体を拓こうとして、動く。

 それは、優しいのか残酷なのかわからないくらい、僕を翻弄し続けて…。


「司、愛してる…」

 ぎゅっと抱きしめてそう言うと、アニーは右手で僕の左足を抱え上げた。

 そして……。

「…ん、あ…っ」

 指なんかとは比べものにならないくらい、壮絶な圧迫感が侵入してきた。

 体の中身が全部外に押し出されてしまうような、そんな苦しさの中で、僕はやっぱりアニーにすがることしかできない。


「司…息、吐いて…そう…ゆっくり…」

 アニーも苦しいの…かな?
 僕に掛ける声が掠れてる…。


「…アニー…、だいじょう…ぶ?」

「司?」

「…つらい…?」

 胸がつっかえて、あんまりちゃんと喋れないけれど、僕は、アニーが気になって。


「司は? 辛いだろう? ごめんね…酷いことして…」

 何度も僕の頬を撫でてくれるアニー。

 その優しい手に、なんだか気持ちがふわっと楽になる。


「うう…ん。へいき…アニー…だから」

「…ぼく、だから?」

「うん…アニーだから、だいじょうぶ…」

 アニーだから…嬉しい。

「…司…!」

 またきつく抱きしめられて、それから僕はもう、あんまり考えられなくなってしまった。

 ただ、信じられないほど体の奥にアニーを感じて、辛くて苦しいけど、そんなことどうでもいいくらい幸せだったことだけは、ずっとわかってた。



                    ☆ .。.:*・゜



「ごめんね、司」 

 ごめんと言いつつ、アニーは笑ってる。

 あの後、二人して抱き合ったまま、朝までぐっすり眠ったのはいいけれど、髪をちゃんと乾かさないままだったので、僕の頭は鳥の巣状態。

「たくさん擦れちゃったから」

 そう言われて、昨夜、ベッドの中でアニーに揺さぶられ続けていた事がありありと記憶に蘇って、僕は顔面から火を噴いて言葉をなくす。

 そんな僕の様子を、アニーはこれでもかって言うくらい嬉しそうに見つめながら、僕の寝癖を丁寧に直してくれる。


「さ、出来た。立てる?」

「た、立てるに決まって…」

 って、椅子から勢いよく立ち上がった瞬間、僕はまたぺたんと座り込む羽目に…。

「あ、ほら、危ないよ。僕につかまって」

 つかまるというよりは、半分抱きかかえられてるような状態で、僕は制服に着替え、何とか朝ご飯を食べて、どうにか登校したんだけど。


 ふらつく僕を心配してくれるクラスメイトたちの、妙に遠慮がちな――どこか探るような――言葉遣いと視線が、一日中痛かった…。


END


そんなわけで、一応のHappy Endと相成りましたv

が。

さらにその後のお話となります、
二人が3年になってからの、『Will you marry me?』と言うお話も書き始めています。

またまたお待たせいたしますが、気長に待ってやって下さいませ〜☆

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