幕間 「ここにいるよ」
【2】
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「先生、お車じゃないんですか?」 個人レッスンを終えて、退校する彰久を見送るために直也も正門まで来た。 都内でもそこそこ辺鄙なところにある聖陵学院。 訪れるお客のほとんどは車だ。 そのため、かなり広大な来客用駐車場が備えられている。 「あ、うん。実は自宅まで徒歩圏内なんだ」 「えっ? ほんとですか? 生徒の頃からですか?」 「ううん。あの頃はまだ全寮制じゃなかったけど、寮に入らなくちゃいけない程度には遠かったよ。こっちに住むようになったのは、社会人になってから」 社会人になってから、わざわざ引っ越して来るのも珍しいなと、直也はなんとなく思う。 「実家は最寄りが渋谷で便利は便利なんだけど、ここの方が緑が多くて好きだな。マンションも駅の真ん前だから、都心に出るのも便利だし、窓から母校も見えるし。でも、年の半分くらいしか帰れないけどね」 国内海外を問わず、演奏会の日々を送る多忙な身だと、渉からも聞いている。 「ひとり暮らしされてるんですか?」 何気なく訊ねた言葉だったのだか。 「…あ、ええっと〜」 言いよどんだ彰久に、直也は少し慌てた。 「…あっ…と。立ち入ったことを聞いてすみません」 「あ、ううん、いいんだよ。そうじゃないんだ。ただ、あんまり周りにも言ってないから…」 照れくさそうな笑顔が幼くて、なんとも可愛らしい。 「えっと、ナイショにしてくれる?」 「もちろんです!」 「えっとね、一緒に住んでる大切な人がいるんだ」 「Wow!」 「あはは、麻生くんのリアクション、面白い」 「藤原先生、管弦楽部員の間でもすごく人気あるんですよ」 「え? 僕が?」 人気者だと言われて目を丸くして驚いた彰久に、直也はふと既視感を覚えた。 「はい。で、 恋人いるのかなあ…なんて、みんな気にしてたんですけど、それを僕だけが知ってるなんて、なんかもう、めっちゃ優越感です」 「やだなぁ、こんなちっちゃい話で優越感に浸ってちゃダメだってば」 実年齢よりはるかに若く見える笑い顔も、誰かに…。 自分に向けられている好意に無頓着で、素直で、包む込むような暖かさ。 これは…。 ――渉…だ。 外見が似ているわけではない。 ただ、内面から漏れ出る優しさが、渉に似ていると思った。 この人を恋人にしている人は、さぞ幸せだろうなと思う。 自分のように。 「先生、明日もよろしくお願いします」 「こちらこそ。木管分奏久しぶりだから、楽しみにしてるよ」 「お気をつけて」 「ありがとう。また明日」 正門を出る、線の細い後ろ姿を見送って、軽く、温かくなった気持ちを抱えて、校内へと向かった直也はふと足を止めた。 ――ちょっと待てよ…。 駅前にマンションは3棟。 いずれも総戸数が多く、3DK以上の所謂『ファミリータイプ』のものがほとんどで、家庭を持つ聖陵の教職員が多く住んでいると聞いていてる。 顧問の自宅もその中のひとつ…だが。 ――浅井先生、校内の教職員寮に部屋持ってるよな。でも、マンションに自宅があるし…。 今まであまり深く追求しなかった。 管弦楽部の顧問が激務なのは誰もが知っていて、帰れない日もあるから、部屋を二重に持っていても当然だと思っていたから。 けれど、よく考えたら教職員寮はそんじょそこらのマンションより広くて快適で、食事の心配はいらないし、家賃もいらない上に、通勤時間は0分だから、みんな結婚したがらない――つまり、教職員の独身率が異様に高いのは、この恵まれた環境の所為だと言われるくらいで、それをわざわざマンションとの二重生活にするわけとは…。 そう。もし自分が首尾良くここへ就職できても教職員寮には入らない。 渉と桂と3人で『HOME』を作るから。 と言うことは…。 ――もしかして先生のマンションに、誰か、いる? ふと思いついた。 代々、高等部の部長が受け継ぐ『極秘ファイル』の中に、外部講師の個人情報があったはず。 特に必要になっていないから見なかったが、必要があれば部長だけは閲覧が許されているので、見るのは勝手だ。口外しなけりゃいいことで。 早速直也は鍵を手に、重要書類のロッカーへ向かった。 ――あった。 所属先は桐生昇がソロ・コンサートマスターを務める名門オーケストラ。 契約は『特任ソロ首席奏者』。 つまり、『ソロ・コンサートマスター』同様に『お願いされて』首席の座にいる立場だ。 そして、マネジメント会社は、桐生家関係者がすべて所属している赤坂良昭の事務所。 そこまでは、たいてい皆知っている。 ――うわっ、やっぱり! 住所が顧問と全く同じだった。 もちろん、部屋番号まで。 ――浅井先生と藤原先生、恋人同士だったんだ…。 青天の霹靂、驚天動地、未知との遭遇、寝耳に水…等々、直也の頭の中を数々の言葉が渦巻く。 けれど、何だか嬉しかった。 2人が一緒にいるところは見たことがないが、さぞお似合いなのではないだろうか。 それに、よくよく考えれば自然な成り行きなのかも知れない。 同じフルートパートで大学までの青春時代を共に過ごし、最も可愛がっていた後輩なんだよと、葵からも聞いたことがある。 ――渉、知ってるのかな? 一時は憧れ以上の感情があったと推察できた、渉の顧問への思い。 だが、そう言えば…。 『藤原さんがね、『麻生くんによろしく』って。今年もレッスン楽しみにしてるって』 正月にやりとりしたメールの中で、そんな言葉があった。 あの時は、今年も見てもらえるんだという喜びが先に立って、深く考えなかったのだが、あの時期の渉は確か顧問の実家で過ごしていたはず。 だとしたら、何もかもが幸せに収まっているのだろう。 ――早く渉の顔がみたいな…。 気を張り詰めているだろう渉を抱きしめて、自分と桂が――和真も英も――側にいて見守っているのだと、その心の奥にまで、伝えたい。 ☆★☆ それぞれの不安を余所に、結局黄金週間強化合宿中も特に切迫した状況にはならなかった。 お互い知っていると認識していても、渉も何も言わないし、直也と桂も何も言わなかった。 ただ、直也と桂は、許す限りの時間、渉を腕の中で甘やかした。 少しでも、渉の心が軽くなるようにと。 そして、黄金週間強化合宿を終えて数日後のある日。 練習室の廊下の隅で、探していた渉を漸く捕まえた直也は、5月後半の合奏スケジュールについて、最終確認を取っていたのだが…。 たまたま、廊下の反対側に、紘太郎と章太の姿を視界に留めた。 その時の直也に、あれこれ考えている間はなかった。 ただ、身体が勝手に動いた。 「渉…」 声色を少し緩めて低くするだけで、自分の声が格段に艶を持つことを、直也は知っている。 そして、その声で名を呼べば、渉がふわっと頬を染めることも。 「なおや?」 部活の重要事項を話していた最中に、突然『土曜の夜』の色を纏われて、渉の言葉が少し幼い響きになる。 この声を聞くと、いつも歯止めがかからなくなるのだが、今は…。 「ちょっとだけ、いい?」 言いながらもすでに、息が唇にかかり、渉は頷く代わりに目を閉じる。 触れる唇は次第に結びつきを深くして、角度を変えては何度も縺れ、身体を包み込む手の動きはまるでベッドの中での『それ』で…。 少し身じろいだところで逃れることは許されず、渉はもう、身を任せるしかない。 「…もう…ちっとも『ちょっと』じゃないじゃん…」 やっと解けた繋がりに、弱く恥ずかしげな抗議を見せる渉に、『見せつけるため』だったことをうっかり失念しかかっていた自分に気づき、直也は苦笑するしかない。 「ごめん。でも、渉が可愛すぎて止まんなくなった」 肩に寄りかかる小ぶりな頭を抱え、額に触れるだけのキスを贈った時、走り去る影が視界の端を掠めた。 ☆ .。.:*・゜ 今見た光景が頭から離れない。 章太が何か言ったような気がするが、言葉を認識できるところまで届いて来なかった。 焦がれ続けるあの人は、愛おしげに見つめられて、頬を染めて目を閉じた。 重なる唇と、華奢な身体を閉じ込めるようにまわされた腕。 キスは何度も解けては縺れ、ただ抱きしめるだけではなく、肩や腰のラインを確かめるようになぞる手のひらが、キス以上の関係を匂わせて、そしてそれを全身で受け入れている、あの人。 何もかもを委ねて、幸福に満ちた表情が美しすぎて直視出来なくなった。 もし自分が無理やりもぎ取っても、あの人はあんなに幸せに溢れた顔を見せてくれるだろうか。 そう自問したとき、心に墜ちてきたのは『敗北』の二文字だった。 ☆★☆ 「ごめん、やっちゃったよ…」 詳細を報告して、心底すまなそうにうなだれる直也の肩を、桂が優しく叩く。 「いや、よくやってくれたと思う。マジで」 「桂…」 「だってさ、渉は常に緊張状態だし、いい加減俺たち的にも限界だったしさ。それに俺、もしホントに例のアレ…どっちかひとりをおおっぴらにしようって案が決行されたとしても、直也の方が良いだろうって思ってたんだ」 桂の意外な言葉に、直也が目を見開いた。 「え、なんで?」 「だってさ、あいつ、トップサイドだぜ? さすがにやりにくくなるじゃん。そうなると、オケ全体に迷惑かける可能性がなきにしもあらず…だろ」 桂としては、それだけは何が何でも避けたかった。 それは3年間守り続けたコンサートマスターとしての、責任感とプライド。 そして…。 「渉を挟んだ恋愛感情でオケにヒビいかせでもしたら、俺はもう、渉の側にいられないし」 これから先のずっと遠い未来まで、渉の、誰よりも信頼されるコンサートマスターでいたいから。 「だから、これで良かったんだって。わざわざおおっぴらにしなくても、本人には伝わったわけだし」 確かに、結果オーライだったかも知れない…と、直也も桂の理解を得られたからこそ思えるのだが。 「…そうだな。2人で護ると決めたんだから、この先の色々も、最良の方法を柔軟に探していかなきゃ…だな」 3人で歩むと決めた『これから』は、まだ最初の一歩を踏み出したばかり。 難しい道を選んだのではない。 これが自分たちにとって、一番幸せな道なのだから。 「あ、じゃあ、今度の土曜日、俺に譲って?」 「えっ! 何でだよっ。それとこれとは別だろっ」 「今、柔軟にって言ったとこじゃん〜」 「だから、それとこれとは別だ!」 「え〜、直也のケチ〜!」 ☆★☆ 翌日から、体調不良を理由に紘太郎は部活を休んだ。 それも3日目となり、直也は部長としてフォローすべきところなのだが、休んでいる原因を知るだけに、自分が動くと事態の悪化を招く恐れもあり、さりとて顧問への報告も必要になってきた手前、放置と言うわけにもいかず、思案にくれていた。 渉も何かおかしいと感じたようなので、渉が動く前にもなんとかしなければと思っていたところで、和真が声を掛けてきた。 「ね、もしかして、…ええと、岡崎が休んでるのって…やっぱり例のアレが原因?」 和真にはあの後すぐに報告していて、『一緒にいたのが結城で良かったよ。あの子は口軽くないし』と、和真らしい感想だったが、とりあえず一山越えたかな…と話していたところだ。 直也は、この場合どう動くのがベストか、和真にアドバイスを求めたのだが、アドバイスどころか和真はすぐに、本人と話をしてくると駆けていってしまった。 そして、弦セクションの練習から戻ってきた桂に今し方のいきさつを話しているところで、早くも和真が戻ってきた。 「明日から復帰するって。心配かけてすみませんって言ってたよ」 和真の表情は明るい。 「インパクト、でかかったみたいだね。渉の様子が自然だったからかなあ。とにかく、自分の目で見てしまった結果だから、受け入れざるを得なかったみたい」 「良かった…」 直也が吐息と共に、呟くように言った。 自分がまいたタネだけに、やはりその結果はどう転ぶのか、怖かったのは確かだ。 「あとは、それを渉にどう伝えるか…だな」 桂が言うと、和真が『う〜ん』と首を捻った。 「それは、こ…岡崎から言わせた方がいいんじゃないかな」 「え? 岡崎から渉に直接…か?」 驚く直也に和真は頷いた。 「渉のことは、今すぐ吹っ切るには想いが深すぎたみたいだけど、自分で方向性を変えようとは努力してるみたいだし、もうちょっと待ってやれば、自分で踏ん切りつけて、ちゃんと『諦めた』って伝えられると思うんだ」 「…まあ、確かにそう言うことは本人の口から聞くのが一番ではあるけどな」 直也の言葉に和真は頷いて、『それに…』と続けた。 「あれだけ憧れて尊敬して、それで追っかけて来たんだから、『失恋しました。修復もできません』じゃ可哀想だし、これから少なくとも1年間は同じステージで一緒にやる仲間だし…」 純粋に、渉の音楽に心を揺さぶられた瞬間があったに違いないのだから、出来ることならこれからも、音楽を通しての渉の仲間でいさせてあげたい…と、和真は幼なじみを慮る。 「…そうだな。幸い俺たちがこの件を知ってる…ってのは、岡崎にはバレてないことだし、渉さえ納得出来るなら、それがいいのかもな」 桂が言うと、直也もまた、少し表情を和らげて言った。 「きっと、渉は許す…だろうしな…」 「ああ、そうだな」 2人の言葉に和真も、黙って頷いた。 渉の懐が深くて暖かいことは、とっくに知っているから。 「ところでさ、和真」 「なに?」 「お前のフットワークが軽いのは、まあいつものことだけどさ、岡崎とかなり腹割って話したみたいだけど、なんで?」 「なんでって、なんで?」 直也からの問いの意味がわからずに、和真が首を傾げた。 「だってさ、相手は今年の『正真正銘』で、合奏もまだの状態で、管と弦だし、どこにそんな接点があってそんなに速攻で突っ込んだ話ができる仲になってんだろうって話」 「ああ、そう言われてみれば」 桂も参戦して来た。 「俺、部活の時間中はほとんどヤツと一緒だけどさ、まだ腹割って話すなんてほど遠いぞ。まあ、渉のことがあって、なんとなく溝があったけどな」 相手の懐に自然に入り込める質の桂にしては、手間取っているのだ。紘太郎には。 だがそれも『これまで』にしたいと思っているが。 「でも、なんか、和真見てると『先輩後輩』って感じがしなくてさ…」 「あ、それそれ。なんか同級生みたいな感じ」 2人が納得しあったその時、和真の表情に、ちらりと動揺の色が走った。 「いや、ほら、紘…じゃなくて、えっと…岡崎って、入寮した日に、うちの部屋に突撃してきたじゃん。だから何て言うか、話しやすいと言うか…」 どだい嘘なのだから、説得力はない。 だが、今までの和真なら、黒でも白にしえたのだ。 そのオーラと物言いで。 「あ、それにさ、今回の渉の件では僕が第1発見者だったし」 だからだよ…と、強引に押し切れば、直也も桂も『そんなもんか?』…なんて顔を見合わせている。 「だいたい、そんなことより渉…だろ?」 「「…だな」」 伝家の宝刀、黄門様の印籠。 とりあえず『渉』と一言発すれば、ヤツらの意識ははぐらかせる。 やっぱり『切れ者和真さま』の方が一枚上手だった。 ☆★☆ その後、相変わらず、噂の主流は『NKコンビは渉にべったり』と言う程度のもので、渉と直也に関する『何か』は聞こえてこない。 これで、紘太郎が渉にきちんと話ができれば、それで一件落着だな…と思った頃、いつもの岩の上で話をしているときに、英が和真に言った。 「渉のことでなにかあったんだろう?」 穏やかな口調は、責めるものではない。 けれど言葉に詰まった和真に、英は話を続けた。 「なんかトラブってるなとは思ってたんだ。でも、和真が何も言ってこないうちは、静観していようと思って」 「…英」 見上げれば、優しいけれど、少し寂しそうな笑顔。 英のこんな顔は、見たことがなくて…。 「けどさ、もう少し頼って欲しいかな」 たまらなくなって、しがみついた。 すぐに返ってくる強く優しい抱擁。 渉が、直也と桂にしがみつきたかったように、自分もまた、英にしがみつきたかったのだと思い知り、和真は頬を朱くする。 ――今までこんな甘えた考え、持ったことなかったのに…。 そして英はと言えば、しがみついてきてくれた和真に、ちょっと情けなかった気分があっさり浮上して、あとはもう、甘やかしたいばかり。 「相談にのる…とか、そんなのでなくても、ただ、俺が抱きしめることで少しでも気分が軽くなれば…って思ってるんだけど?」 ただでさえ年上なのに、その上しっかり者ときている恋人は、甘えることをしない。 おそらく今まで誰にも甘えることなく、その足でしっかりと立っていたのだろうから。 そんな和真が、力を抜いて息をつける場所になりたい。 何時でもここへ、帰っておいでと言える場所に。 「うん…ありがと、すぐる…」 抱き込んでくれる腕の暖かさに、和真はうっとりと目を閉じた。 |
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ニューキャラ、結城章太が語ります。
『おまけ小咄〜章太くんはミタ!』
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見ちゃったよ、俺ってば。 ずっと前から、栗山先輩と麻生先輩が渉先輩に夢中だって噂はあって、でも、渉先輩の気持ちがどっちにあるのかさっぱりわかんなくて、校内でも意見は真っ二つ…って感じだったんだ。 でも俺的には、栗山先輩の方が若干有利な気がしてたんだよな。 だって指揮者とコンマスってのは、それはそれは密接な関係で、アイコンタクトが出来ないと成り立たない。 つまり、目と目で会話出来るってことで、実際、合奏中以外で2人が目で会話してるとこ見ちゃったことあるし。 ただ、渉先輩って人は可愛いのにビッグ過ぎて、枠に捕らわれないというか、型に嵌まらないというか…。 ともかく、真正面からの猛アピールも『のれんに腕押し』で、全く通じないって話だし、何かにつけて、良い意味で『予測不可能』な人だから、もしかしたら栗山先輩も麻生先輩も、実は恋人じゃないんじゃないか…って推測も多い。 でも、今日のあの現場見ちゃったらもう『確定』以外のナニモノでもないよな。 ってか、麻生先輩のエロいこと。 俺が入学したとき、麻生先輩は中等部の部長で、そりゃもうすでに超人気者だったけど、今から思えばやっぱりまだオコサマで、健康優良児的な魅力に溢れてた。 けど、さすがに高校3年ともなると、大人の入り口って感じで、あんな雰囲気醸し出しちゃって。 ほんと、渉先輩のことが愛おしくて仕方がないって感じで、愛に溢れてたから、エロくてもいやらしさは皆無だった。 できればもうちょっと見てたい…なんて。 でもって渉先輩がまた何て言うか…。 去年の『ロミジュリ』も吹っ飛んだけど、やっぱ『作り物』と『本物』は違うってのを目の当たりにした気分だ。 すべてを麻生先輩に委ねて、心の中を全部解放したような表情は、可愛らしいのに官能的で、一言で言うなら『堕天使』。 あれで恋人同士じゃなかったら、モラル的にアウトだろう。 しかも、多分…というか、絶対、キス以上の関係だ、あれは。 いや、マジでエラいもの見ちゃったけど…。 俺の隣で魂の抜けたヤツがいた。 …ヤバいよな、これ。 だって紘太郎は渉先輩を追っかけてここへ来たわけで、ちょっと方向性が怪しいなと感じてたら案の定、告白しちゃった様子だったし…。 うーん、どうフォローするよ、俺。 中1のケンカの仲裁の方が楽だって…マジで…。 |
ちゃんちゃんv |
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