プレゼントにリボンを掛けて
〜I Love まりちゃん・2001クリスマス企画〜
智&直、高校3年のクリスマス
前編
この企画は『豪華イラスト』がメインですv
ただし、お話を読んで先に妄想を膨らませてください(笑)
なお、イラストは後編にUPしています。
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「うひゃ〜、重かった〜」 「大丈夫?直」 腕いっぱいの荷物を抱えて俺たちは、ここ、智の住むマンションに帰ってきた。 今日は12月24日。 そう、クリスマスイブだ。 つい数ヶ月前、いきなりな展開で恋人同士…もとい、婚約者同士になっちまった俺たちにとって、もちろん今日のこの日は親の手前、婚約者同士でのデートは欠かせないというわけだ。 まあ、誰よりも一緒にいたい人と過ごせるクリスマスって、確かに幸せだよな。 「うん、大丈夫。俺よか智の方がいっぱい抱えてるじゃん」 「俺は平気だよ」 そう言って智はダイニングテーブルに荷物を置き、俺が抱えてる荷物をひょいと……軽々と……取り上げて、その隣に置いた。 「しかしまぁ、買い込んだもんだなぁ」 「だって、直があれも食べたいこれも食べたいって言うから」 そう、今夜はここで二人きりのクリスマスをやろうってことになったんだ。 智、料理上手いしな。ちょっと好き嫌い多いけど。 「へへっ、これくらいちょろいもんだって。俺さまの鉄の胃袋を見せてやる」 「はいはい、直の胃袋の奥深さは俺が一番よく知ってるよ」 …そうかもな。 俺ってば学校での昼飯、智の分、かなり横取りしてたし…。 でも、なんで横取りした俺がこんなにチビのままで、横取られたこいつがこんなにでかいんだ? 俺はついつい、智の顔を凝視してしまう。 「ん?なに?なお…」 俺の視線に気付いた智は、優しい顔でよってきて…。 『ちゅ』 「うわぁ」 「な〜お〜。なんて色気のない声だすんだよ」 「だって、お前、いきなり…」 「そんな可愛い顔でじっとみるからさ」 …こいつ、相変わらず恥ずかしいことをサラッと…。 「さ、支度するから手伝って」 「おうっ!」 智の手際の良さのおかげで用意はあっと言う間にできて、俺たちは『いっただっきま〜す』と言う元気なかけ声で二人きりのクリスマスパーティを始めた。 でもって、俺たちは未成年にも関わらず堂々とワインを開け、これでもかというくらいテーブルに並んでいた食い物をあらかた胃袋に詰め込んで…。 「ふわ〜。美味かった〜」 「よく食べたね、直。苦しくない?」 ソファーにもたれている俺の横に智がやってくる。 「うん、ぜ〜んぜん」 「じゃあ…」 そう言って智は俺をいきなり抱き上げて、膝に乗せた。 「うわっ」 「こら、暴れないの」 「だって、いきなり…。だいたい重いぞ、今夜の俺は」 「どうして?」 「今食ったもんの重量全部含まれてるからな」 「そう?いつもと変わらないよ」 え? 「マジ?」 「うん。ぜんぜん」 俺って…食っても身にならないんだ…ぐすん。 「あはは、どうせ食べても大きくならないって思ってるんだろう?」 げ…。見透かされてるぜ。 「そんなことより直。ほら」 そう言って渡されたのは小さな箱包み。 銀とグリーンのストライプの包装紙に、赤いリボン。 これでもかって言うくらい、クリスマスラッピングだ。 そして、それは二つある。まったく同じものだ。 「えっと、どっちがどっちだったけ?」 どっちも一緒か…。 「どっちも同じだよ」 そうでした。 これは、俺と智のクリスマスプレゼント。 そう、お互いに同じ腕時計を買って交換しあうんだ。 そして、それをお互いの婚約者からのプレゼントと言うことで、親に見せるってことになってる。 俺たちは掌に一個ずつ箱を載せた。 「メリークリスマス、直」 「なんか照れるな」 「照れてないで、ほら」 「うん…、メリークリスマス、智」 俺たちは箱を交換した。 「あけよっか?」 中身は2人で決めた腕時計だから、わかってるんだけど…。 「うん」 俺たちはいそいそと包装を解き、透明の箱に収まった腕時計をとりだした。 智が、まずそれをはめる。 「やっぱ似合うじゃん、智」 「そう?嬉しいな…。じゃあ、直につけてあげるよ」 そういって智は俺の手から腕時計を取って、俺の左手にはめてくれた。 「直も似合うよ」 「そっかな?」 俺としては、智の方が似合うと思うんだけどな…。 「そうだ…」 小さく智が言った。 「なに?」 「ちょっとじっとしてて」 智は、解いた包装の中から真っ赤なリボンをとりだした。 そして…。 「…智?」 それを器用に俺の手首に結びつけた。 時計とは反対の手に真っ赤な蝶結びのリボン…。 「俺にとって、本当のプレゼントは直自身だよな」 「と、智…」 な、なんて恥ずかしいことを…。 「俺、一生大事にするよ。直のこと…」 よ、よくもそんな、照れくさいセリフをヌケヌケと…。 う〜、俺、どんな顔したらいいんだっ。 「直、真っ赤だ」 ひえぇ。 「可愛い…」 ギュッと抱きしめられて、その温かさに思わず俺は目を閉じる。 そして、甘い息と一緒に智の唇が…。 『ピンポ〜ン』 え? どうやらドアチャイムのようだ。 智は渋々俺を離し、肩を竦めて受話器を取った。 「あ、はい、すぐ行きます」 なんだろう? 「直、ちょっと待ってて。海外から大型の小包が来てるっていうから取ってくる」 「あ、うん、俺も行こうか?」 「大丈夫、そんなに重くないって言ってるから」 そう言って智は出ていった。 そして…。 やって来たのは確かに大荷物。でも結構軽い。 差出人はヨーロッパ出張中の智のお父さんだった。 で、受取人は…。 「直だ…」 「え?」 よく見ると『前田方 熱田まり様』になってる。 くぅぅ、情けねぇ…。『まり』が定着してるぜ…。 ま、智のお父さんにとって、俺は大切な一人息子の婚約者『熱田光機の一人娘・まり』なんだからな…。仕方ないか…。 「なんだろう?直、開けてみろよ」 「あ、うん」 俺は手渡されたカッターで、丁寧にテープの部分を切っていく。 なんだか鬱陶しいのは…。 あ、右手に結びつけられてる赤いリボンが邪魔なんだ…。 取ってもいいかな…? 俺は智をみた。 |
☆ .。.:*・゜ |
中身を傷つけないように、丁寧に箱を開け始めた直の右手をみて、俺はふと、既視感に捕らわれた。 赤いリボン…。 そうだ、あれは去年。高2の時のクリスマス。 部活のクリスマスパーティを先輩の家でやったときのことだ…。 |
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「さて、今日のメインイベントはこれだっ!」 わざわざ中等部の連中を先に帰して、残った高等部のむさ苦しい面々ではじまった酒盛りも、かなりピークに達しようとしていたとき、高3の先輩が『じゃ〜ん』とばかりに取りだしたのは、ただのトランプだ。 「なんすか〜先輩。まさかババ抜きでもやろうってんじゃないでしょうね〜」 「バカ言うな。何がババ抜きだ。これからやるのはれっきとした『賭けポーカー』だっ!」 立ち上がって力説する、部内一のお調子者である先輩がそういうと、一様に『え〜』とか『もう〜』とか言う声が上がる。 「おいおい、『賭け』はまずいんじゃないか?」 そういったのは、部内一の切れ者。つい先日まで部長を務めていた蔵原先輩だ。 「心配ないって、まずい賭けなんてするもんか。今日の賭けはな、ちょっと趣向が違うんだ」 今日の賭けって…。いつもやってるのかよ…。 俺は内心でそんな突っ込みを入れながら、成り行きを見守っていた。 俺の隣では、直が少し眠そうにしている。 ちょっと飲ませ過ぎだよな。直も結構強いけど…。 「今日はな、成績最下位のものが商品になる!」 拳を握りしめて言う先輩に、周りの人間が呆気にとられる。 「なんだよ、それ」 「へへっ、最下位のヤツの首に赤いおリボンを結んでだな、優勝者へのプレゼントとするわけだ」 「もらえるのか」 「一日な」 ははぁ、そういうことか。 「それってつまり、『一日奴隷』ってこと?」 「そうそう、そういうことだ。首におリボンちゃんは丸一日、優勝者の言うことを何でも聞く!どうだ?おもしろそうだろ?」 そうかな…?俺は悪趣味だと思うけどな…。 「ま、誰が商品になるかにもよるよな」 別の先輩の一言がその場を一気に盛り上げた。 そして、もちろん俺も、そして、半分寝かかっていた直も強制的にゲームに参加させられて…。 「さ。お待ちかねの結果発表〜」 先輩が叫ぶと、だれかがやり残したクラッカーを派手に鳴らす。 そんな騒音の中でも、直はもう、俺にもたれて半分夢の中だ。 「まずは、商品の発表!」 最下位か…。俺でないことを祈るばかりだけど、俺、かなり勝ったからな…。大丈夫だろう…。 「うわっ、マジ?」 また別の先輩が、結果を書いた紙をのぞき見て絶句した。 「あ、おい、覗くなよっ」 「うわ〜、俺、マジでがんばればよかったよ〜。くそ〜」 その言葉に周りが色めき立つ。 「おいっ、誰だよ、最下位」 「ま、まさか…」 俺もなんだかイヤな予感がした…。 そう、俺が最下位になっておけばよかったと思うような結果じゃなければいいんだけど…。 「商品は…まりちゃんっ!!」 |
後編へ続く |