「うわっ。ともっ、何すんだよっ」
ベッドに沈められた俺は、やっぱりメイドさんのまま。
のしかかってきた智は…。
「ひゃっ」
このっ、変態っ!
いきなりフワフワのスカートの中に顔を突っ込むか!?
「なんだ〜、なお〜」
ばかっ、顔突っ込んだまましゃべるなっ!
「可愛いレースのフリフリとかはいてるかと思ったのに、中身はいつもと一緒なんだ」
「当たり前だろっ、何で俺がそんなの………あ…っ…」
は、反則だぞっ、ともっ…。
いきなりそんな…。
俺は、中心を包み込んだ温かくて湿った感触に声をなくした。
声の代わりに…息が荒くなって…。
「はぁ………あ…と、も…」
いつもは少しでも見えている智の姿が、今日は完全にスカートに隠れて見えない。
ごそごそと、スカートだけがあやしげに揺れて…。
智がいったい何をしてるのか、何をしようとしてるのか、直接与えられている感覚からしか掴めない。
「や…やめ…」
そう言った俺を黙らせるかのように、智は俺の腰をギュッと抱きしめてきた。
「はな…せ…っ」
いきなり限界を感じた俺は、少し悲鳴混じりの声を上げてしまう。
そして、その直後に…。
俺は呆気なく弾けて、息をあらげたまま、一つだけ目尻から涙を落とす。
何で泣いてんだよ、俺。
「どうして泣くの…?」
いつの間にか、智がスカートから顔を出して、俺に顔を近づけていた。
長い指が俺の涙をすくう。
「そんなによかった?」
「な…っ!」
どーしてそんなこと言うかなっ。
抗議しようと開いた口に、智の唇が重なって、舌がするっと入り込んできた。
うぎゃ…。
頼むから、アレの直後のキスは、やめて…欲しいんだけど…。
智はわざとのように俺の口の中をかき回す。
自分がしたことを、俺に教え込もうとばかりに…。
少し離してはまた深く合わせ、何度も繰り返して長い長いキスをする。
でも、やっぱり今日は何かが違う…。
いつもなら…。
そうだ!いつもなら、この間にさっさと俺は剥かれているのに…。
今日の智は、全然俺の服に手を掛けようとしない。
スカートの裾から手を突っ込んでくるだけで、俺は相変わらずきっちりと着込んでいる。
そう…。メイド服を…。
どーして?
けど、その手もかなり問題だったりして…。
結局俺は、智の手に煽られて、また元気になったりする。
「とも…っ」
「何?なお」
「きゅうくつ…」
着慣れてない服のせいか、俺は身体が締め付けられるような感じがして、もがいた。
でも、さすがに脱がせて欲しいとは言えなくて…。
「我慢しようね」
はぃぃ?
「今日はこのまま」
ちょっと…待った…。
俺が、何か言わねば!と思ったとき、いきなり敏感な部分に違和感を感じた。
な、なに?これ…。
「なお?」
智が不思議そうな顔をして覗き込んで来る。
「とも…」
いつもは霞んでしまって、わけわかんなくなるはずなのに、今日は何もかもがやたらとリアルだ…。
すると、智の顔がそれはそれは晴れやかな笑顔になって…。
「もしかして…慣れてきたかな?」
う、嬉しそうに言うんじゃねえっ!
これはきっと、この異常なカッコのせいで、俺の意識がぶっ飛ばないんだ!
やっぱ脱ぐっきゃない!
「俺、脱ぐ!」
ええい、恥ずかしいもへったくれもあるかっ。
「ダメ」
そんなっ…って言おうとしたんだけど、俺の口から漏れた声は…。
「あ…ん」
…だったりする…。
「なお…可愛いよ…」
いつもは遠くで聞こえる智の声も、今日は耳元ではっきり聞こえる…。
「や、もう、脱ぐ…」
俺は無駄とも思える抵抗をジタバタしてるんだけど、
「シャワーの時は脱がせてあげるから…」
そんなことを耳の中にささやかれると、一気に身体から力が抜けた。
「ごめん、なお。我慢できない…」
そんな声を聴いたような気がしたとたん、グッと腰を引き寄せられ、圧迫感が増して…。
「あっ…」
ともが…。
はっきりわかる…。
ともが、俺の中に、いる…。
どうして?何でこんなにはっきりとわかるんだ…?
「泣かないで、なお」
ともが不安げな様子で、そっと唇を合わせてきた。
泣いてる?俺が?
「とも…おれ、なんか変だ…」
「ん?どうして」
そういうと、ともは1回だけ腰をグッと突き上げてきた。
「あぁっ…」
「気持ち…いい?」
これを『気持ちいい』って言うんだろうか…。
よくわからないけど…。
「多分…」
そんな曖昧な返事にも、ともはニッコリ笑った。
そして、緩やかに腰を使い始める。
「ん…あ…」
俺の口から漏れるのは、甘ったるい声。
そして、腰のあたりからじわじわと全身に広がっていく痺れのような感覚。
でも、それは決して不快ではなくて、このまま頭の中まで痺れてもいいって思えるほど…。
そして、ともが動くたびに、スカートやエプロンの衣擦れの音が耳から入り込んで来て、頭の中で暴れる。
「なお…なお…」
衣擦れの間で、ともが俺を呼んでいるのがわかったから…。
「とも…好きだよ…大好きだよ…」
俺は、痺れ始めた頭の中で考えたことをそのまま口にした。
すると、ともは突然動くのをやめて…。
「なお…」
俺をジッと見つめる智の瞳から、一つ、涙が落ちた。
「とも?」
どうして泣くの?
「なお、ありがとう…」
しがみついてくるともの身体は震えていた。
俺はびっくりして抱き返す。
「とも…」
「俺…ずっと、悩んでた…。なお、本当は辛いんじゃないかって」
…そのわりには、今までのエッチにも随分と気合いが入っていたような気がするんだけど…。
ま、それもこれも、ともくんの愛の深さってことにしておいてやろう。
「そんなことない…気持ちいいよ…。すごく…気持ちいい…」
俺はともの身体を引き寄せて、そっとキスをした。
「なお…」
俺の名を呟いたともは、いきなり激しく動き出して、俺は今度こそ脳幹まで痺れてしまった。
この日、俺は意識が飛ぶ瞬間まではっきり覚えていて、最後に小さく『とも』と呼んだ……。
一番高いところまで上り詰めて、ふいに直の意識が切れた。
最後に小さく、『とも』と呼んだことを、きっと本人は覚えていないだろうけれど。
俺はこの日、初めて本当に直のすべてを手に入れたと思った。
大好きだよ、直。一生離さない…。
俺は、小さく直の右手の指輪に口づけて、そっとその髪を撫でる。
でも、まだ寝ちゃダメだよ、直…。
俺はもう一度、直の身体をしっかりと抱え込んだ…。
シュルル…。
何かの擦れる音で俺はぼんやりと目を開ける。
ぐったりしたままの俺は、温かい腕に抱き起こされた。
ふと、視界の端に入ったのは、暗い中にもはっきりと見える、真っ白な…エプロン。
次に、後ろでファスナーの音がした。
背中からひんやりとした空気が入ってきて気持ちがいい…。
「ん…」
俺は智の肩に頭を預けて息をつく。
「直…起きた?」
「う…ん」
「シャワー浴びよう…」
「うん…」
ああ、これでやっと『あの』服が脱げるんだ…。
ほけ〜っと幸せに浸っている俺の身体がふわりと浮いた。
俺は無意識に、智の首に腕を回してしがみつく。
暗い部屋から廊下に出ると、間接照明のぼんやりとした灯りで自分のカッコがわかった。
うわ…何にも着てない…。
これはこれで、けっこー、恥ずかしい。
でも、バスルームの明るい照明の下に来ると…。
「智っ」
「なぁに?」
「こ、こ、こ、これは!」
「可愛いだろ?」
お前っ!どういう趣味してるんだっ!
そう、抱き上げられている俺は素っ裸だってのに、なぜか真っ白フリフリのソックスだけは、ちゃんと履いていたんだ…。
「このっ、エロおやじっ」
そう言うと、智はムスッとふくれた。
「親父と一緒にするなよ」
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