「a queer fish」のさんぽさまから、
10万のお祝いにいただきました!
感謝感激です!
「a queer fish」 VS 「桃の国」
看板オヤジ対決の勝敗の行方はっ?!


華麗なる看板オヤジ対決☆
桃の国看板オヤジH・M氏を貸し出して貰ったですっ!





ビジネスランチが無事終了して、移動のための車を廻している最中にことは起こった。

洲本は車が玄関に到着したことを彼のボスである社長の逢坂に伝えようと、某ホテルのロビーを急ぎ足に移動していた。洲本は秘書室に勤務を始めて2年目の、若手の秘書である。今日はこのホテルの9階にあるフレンチレストランで、海外資本の某社経営陣との昼食会が行われたのだ。それで社長に同行したのは、洲本と、彼の先輩である有藤の二人の秘書。有藤は今、車を玄関につけて待機してる。

ロビーラウンジの奥まった席で、逢坂はコーヒーを飲んでいた。そのまま近づいてゆこうとして、洲本ははっとして立ち止まる。
逢坂の席の真向かいに腰掛けている人物に気が付いたのだ。
あれは、・・・たしか・・・『MAJEC』の会長。
そう、今逢坂の向かいで葉巻を燻らせているのは、知る人ぞ知る日本経済界の怪人、某情報関連企業創始者にしてワンマン会長の前田春之そのひとであった。

洲本は突っ立ったままで固まってしまう。前田氏といえば、その才覚ひとつで巨万の富を築いた伝説の経営者であり、その手腕はひろく海外にまで知れ渡っている超大物である。
わが社とはとくに関連のない分野の企業だが、そこはそれ、同じ経済界に生息している者同士、うちの社長と面識があってもおかしくはないはずだ、・・・・が。

なんか、・・・あの二人の周りだけ、空気が澱んでいるように見えるのは何故。

洲本は二人に気付かれないように、そっと近づいてみる。何か話している様子だが、話の内容まではわからない。経済動向だとかの重要な話でもしているのだろうか。二人とも妙に真剣な面持ちである。
邪魔しない方がいいかな。・・・しかし、この後の予定がずれ込むのはまずいような・・・。
洲本は判断がつかずに、その場から離れた。先輩である有藤の指示を仰ごうと思ったのだ。それにあの二人の傍にいるのが妙に息苦しかったせいもある。
とりあえず有藤さんに報告したほうがいいよな。ヘタに自分が手出しをしたらヤバイような気がする。
来た道を一目散に取って返す洲本であった。


つまんなかったな。
逢坂はコーヒーを飲みながら、先程の会食を思い返していた。
外資系というからなんか物珍しい話でもあんのかと思って、わざわざクソ不味いフレンチなんか食いに来てやったのに。なんだよあの、欧米人が誤解してる間違ったニホンジンみたいな日本人は。めがねかけて七三にしやがって、バンコク博覧会かお前らは。石貨時代の商売の話みたいな古臭いことしか言わない上に、物欲しそうに人ん家の情報ばっかり聞き出そうとしやがって。
勝手な期待をして裏切られたと勝手に憤慨している、それなりに有名企業の不良社長、逢坂克哉、34歳である。

ああ、口直しがしたい。今食ったフレンチをチャラにできるなら、ラーメン食いに行きたいな。
逢坂が会社の近くのラーメン屋に思いを馳せていたその時。
「逢坂君じゃないか。奇遇だな」
渋いバリトンの声で背後からそう呼ばれて、振りかえった逢坂はこれ以上ないというくらいに眉を顰める。
そこに立っていたのは、逢坂が前々から害虫のように忌み嫌っている男、『MAJEC』会長の前田春之氏であった。

「今日は日が悪い」
逢坂はぼそりとそう呟いた。前田氏はしかし全く聞こえなかったらしく、にこやかに笑みかけながらこちらに近づいて来ると、勝手に逢坂の前の席に腰を下ろす。
「こんなところで君に会えるとはね。ふふ、久しぶりだな。あのシリコンバレーの件以来じゃないか?」
わざわざそうやってほじくりかえしてくるか、普通。逢坂は返す言葉にさえ詰まってしまう。
前田春之氏。日本経済界の怪人と称される男である。年齢はまだ50台にさえ満たないのだが、自分の才覚ひとつで自社を世界と渡り合うクラスの企業に育て上げた人物であり、すでに彼の存在は日本経済界では一つの伝説となりつつある程である。

だがな。逢坂は、目の前でゆったりとした動作で葉巻に火をつけている、中々に美丈夫な前田氏を眺めつつ思う。私はこのオヤジが大嫌いだ。

前田氏の企業と逢坂の会社は、本来競い合うような部分はなかった。だが数年前、逢坂がまだ会社の一取締役に過ぎなかった頃、新しい部門を創設しようとして、前田氏の企業の一部門とバッティングしてしまったことがあるのだ。
その時の屈辱は今でも忘れられない。前田氏はまるで虱でも潰すように、いとも易々と逢坂の手を封じこめてしまった。買収しようと密かに話を進めていた工場は、めちゃくちゃな条件で先に買い取られてしまうわ、当てにしていた現地スタッフはヘッドハンティングされるわ、目論んでいた企画はその創案者ごとムチャな条件で奪い取られるわ。
いくら若く経験が浅かったとはいえ、まるで手を打つことが出来なかった当時の自分を、逢坂は今でも許せないと思っている。ことのあったシリコンバレーは、逢坂にとっては今でも鬼門である。
その直後にたまたま知り合いのパーティで顔を合わせた時、前田氏はにこにこしながら逢坂にこういったものだ。
「若いうちはね、そう、色々と経験を積むべきだよ君」
それ以来前田氏は、逢坂の中で最も忌むべき存在となった。

「あ、君。私には紅茶をくれないか」
ボーイにそう伝えると、前田氏は逢坂に向き直る。
「社長に就任してからの、君のおちゃめな活躍ぶりは聞いているよ。相当ムチャなやり方で、各方面を泣かしているそうじゃないか。ふふ、私があのとき見込んだ通りの男だったな君は」
おちゃめ、だとう?逢坂はテーブルの下で拳を握り締める。
「恐れ入ります。私は前田さんと違って、無軌道な男ですのでね」
つとめて平静にそう返すと、前田氏は軽く笑い声を上げる。
「無軌道ね。実にいい。そういう男が大好きだよ私は」
私はお前が大嫌いだよ。心の中で呟きながら、逢坂はコーヒーの残りを一気に飲み干す。

丁度その時、ボーイが前田氏の紅茶を運んできた。コーヒーのお代わりを頼みながら、逢坂はボーイににっこりと笑いかける。
わりと可愛いじゃないか。こんなときにも関わらずそんなことを考えているあたり、ちょっと病気な逢坂である。
すると前田氏はそのことに気付いたらしく、難しい顔をしてこう言って来た。
「おいおい。君は経営面では中々見所のある奴だと思っていたが、・・・趣味が悪いな。あんなののどこがいいんだ?卑しくも一国一城の主たるもの、もっと審美眼というものを養わないと。その点私を見たまえ」
前田氏は言いながら、懐のあたりをごそごそすると、1枚の紙片を逢坂に差し出した。
よけいなお世話だ、ひとの趣味にケチつけやがって、このヒヒオヤジ。逢坂は内心そう思いながら、その紙片を受け取る。そしてそれに視線を落として、あまりのことに目を剥いてしまった。

写真であった。制服姿の、絶世の美少年がはにかむようにこちらに向かって微笑んでいる。年の頃、15,6というところだろうか。
逢坂の呆けたような顔をにやにやと眺めながら、前田氏は得意そうに言い放つ。
「ふふ。絶品とはまさにこの子のためにある言葉でね。奈月 葵君といって、私の母校の後輩にあたるんだが。君、この子などはね、単に美しいだけではないのだよ。やがて時代を担うべき、天才フルート奏者なのだ」
・・・それで食ったのかオヤジ、この子を。このいたいけな美少年を。なんちゅう鬼畜オヤジだ。
内心そう罵りつつも、このままでは引き下がる訳にはいかないと思っている、妙なところ勝気な逢坂である。
仕方ない。あれを出すか。

「ふ。あなたがそこまでおっしゃるなら、私も手のうちを明かさないわけにはいきませんな」
言いながら逢坂は、懐をごそごそして1枚の写真を取り出すと、前田氏に手渡した。
前田氏の顔が、あからさまな驚愕の表情を浮かべる。
「き、君。こ、これは」
さすがの前田氏も絶句してしまった。ふ、勝負はあったな。内心笑いの止まらない逢坂である。
逢坂が出したのは、ひょんなことでしばらく一緒に暮らした少年の写真である。岡本 祐、中学1年生。幼いなりにとても美しい少年であった。写真は記念に隠し撮りした、彼のメイドさん姿である。(逢坂がそういう格好をさせたのだ。どこまでも病気な逢坂である)肉体関係などはなかったのだが、そんなことはこのオヤジに言う必要はないだろう。逢坂は前田氏の呆けた顔を眺めながら悦にひたっていた。ふふふ。私の子猫ちゃんは、これ以上望めないくらい若い上にメイドさんだぞ。ざまあみろ。

「・・・しかたない。君がここまで食い下がろうとは。それでは私も最終兵器を出さないわけにはいかないな。・・・これだけは出したくなかったのだが」
そう呟きながら前田氏はまたも懐をごそごそと始めた。何っ!逢坂が怯んでいるスキに、またも1枚の写真を取り出すと、逢坂に差し出す。
受け取って逢坂は、がっくりと肩を落とした。
ま、負けたのか私はっ・・・。
その写真は、またも絶世の美少年。先ほどの少年とはやや趣きが違うものの、屈託のない明るい瞳の、それはそれは美しい少年であった。
しかも、なぜか白無垢姿。
こんな純情そうな子にこんな格好をさせるなんて、なんちゅう破廉恥なオヤジだこいつ。自分のことは棚に上げて、内心悪態の限りををつくす逢坂である。
くそう、こんな、・・・こんなところで負けるのか私は・・・
歯噛みする逢坂の手から件の写真を引きぬきながら、前田氏はゆったりと笑って見せる。
その時。

「社長。車の用意ができております」
声がして振り返ると、逢坂の秘書にして甥っ子でもある有藤 南が立っていた。南は前田氏に軽く会釈をすると、「お久しぶりです、前田さま」
と、簡単な挨拶を口にする。父親が経済界の要人である南は、元々前田氏とは面識があるのだ。
「ああ、有藤君しばらく。お父上はご健勝かな」
前田氏がそう応えている最中に、逢坂はいきなり立ち上がると南に向かってまくしたてた。
「南っ!お前隆士君の写真持ってるだろうっ。出せお前!今すぐ出せっ!」
その剣幕に南はたじろぎながらも言葉を返す。
「社長、一体どうなさったんですか。そんなに取り乱さないでください。なにをおっしゃっているんですか」
逢坂は答えずに、南の懐にいきなり手を突っ込むとごそごそし出す。
「な、なにをなさるんですか」
「いいから出せ南、隆士君のメイド写真。お前持ってんだろう」
「そ、そんなもの持ってませんよ。何なんです一体」
「なにお前、写真撮ってないのか隆士君のメイドっ!?」

なりゆきをおもしろそうに見ていた前田氏が、立ち上がると逢坂に向かって言う。
「君は相変わらずだな、逢坂君。素直に負けを認めないのが君の大きな欠点だよ。シリコンバレーの件では、それを君に教えてやったつもりだったんだが・・・」
前田氏はそのまま逢坂に歩み寄ると、その肩をぽんと叩いて笑いながら悠々と歩み去っていった。

「くそう。・・・隆士君のメイドだったら、勝てたかもしれなかったのに。・・・南、お前が悪いんだぞっ」
そう言い捨てると逢坂は憮然として歩き出す。
「なにをおっしゃっているのか、さっぱりわかりかねます」
南はその後を追いながらそう返したのだが、逢坂は応えなかった。
彼の頭の中は、来るべきリベンジの時の計画で一杯になっていたのだ。
あの腐れオヤジめ。次は絶対負けないぞ。古今東西の美少年美青年の写真を集めまくってやる。
何時の間にかしょうもない競争になってしまっているのにはまるで気付いていない逢坂 克哉、34歳。所詮はまだまだ未熟者なのであった。




ふっふっふ〜v
ご存じ「a queer fish」のさんぽさまからいただきました、爆笑お祝いですv
いや〜、やられてしまいました(笑)
H・M氏(49)、暴走がターボに入ってますv
しかも、いつの間に葵の写真を・・・。
寄付にモノを言わせたかっ?!第1期生!!
しかし、逢坂社長(34)もすごい!
白無垢のまりちゃんを一発で男の子と見抜くあたり、ただのバイキン社長ではありません。

・・・それにしても、コワレてない南さん、久しぶりに見たよ(爆死)

さんぽちゃん!!本当にありがとうございました!!


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