憧れのどっち側?

清文となーちゃんのお初物語

【ちょっと大人のお初物語】

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「なーちゃん…可愛い…」

 俺が身体から力を抜いたのが伝わったのだろう。
 清文は俺の耳元で甘く囁いて、そのまま耳朶を軽く噛んだ。

 それだけで俺は身体を震わせてしまう。

『こういうこと』に関する経験値はゼロで、知識と言えば紙の上のものばかり。

 そんな俺だから、素肌を全部晒すという事態に至っても、何にも出来なくて、ただ清文にしがみつくことしかできない。

 耳を噛んでいた清文の唇が頬から顎へと移動して、首、鎖骨と辿っていく。

「…甘い…」

 ポツッとそう言って、清文は俺の胸先を啄んだ。

「…んぁっ…」

 思わず漏れ出てしまった甘ったるい声が自分のものだと俄には信じられなくて、体中が熱くなる。

 俺の腰をさすっていた清文の暖かくて大きな掌がスルッと移動して、反応しかかっていた俺自身に絡みついた。

 そのまま煽るように…しかも中途半端にゆるゆると擦られて、俺はその焦れったさに思わず身体を捩る。

 その時足に触れた、清文の熱い欲望。

 思わず身を固くしてしまった俺に、清文は照れくさそうに苦笑すると、『なーちゃんの所為だからな。責任取って』…なんて物騒なことを口にした。

 それから。

 清文の手で一度、あっさりといかされて、荒く息をついている間にあろうことか口に含まれてしまって俺はちょっと暴れた。

「や、やだっ。清文っ、やめてってばっ」

 恥ずかしいのと、今まで経験したことがないほどの、身体が溶けてしまいそうな快楽が怖くて、なんとかしてやめてもらおうともがく俺を、清文は難なく片手で押さえつけたまま、後ろをまさぐり始めた。

「ひぁ…っ」

 ゆるゆると潜り込んできた指が、次第に奥へ奥へと進んでくる。ほんの少しの痛みと、かなりの圧迫感と…。

「…や、あっ…!」

 深く潜り込んだ指に反応して、跳ね上がる俺の身体。
 意識が次第に白くなる。

「なーちゃん…」

 呼ばれて薄ぼんやりと目を開けてみたら、そこには清文の、恐ろしいくらいに真剣な顔があった。

「きよふみ…」

 なんだか舌足らずな声で呼び返してみれば、また深くキスをされて、俺の足がふわりと浮いた。

 押し当てられる、熱くて固い感触に、俺の意識は一気に浮上した。

「や、やっぱり、こわ、いっ」

 未知の感覚に、俺の身体は心とは裏腹に逃げを打った。

 口をついてでた言葉が、本心なのかどうなのか、わからない。
 だって、清文が欲しいという気持ちには変わりはないのだから。

 けれど身体は勝手に――清文の視線から自分を守るかのように――縮まって、俯せてベッドに這い蹲った。

 でも、その縮んだ身体を覆い尽くすように、清文が背後から被さってきた。
 背中が、暖かい。

「このまま、じっとしていて」

 俺の耳にそう囁いて、清文の左手が俺の身体をしっかりと抱え込んだ。
 
 そして右手は俺自身を捉えてあやすようにゆるゆると擦り始める。
 その刺激に思わず声を漏らし、足の力が抜けた。

 清文の膝が、そんな俺の足を少し横へと押しやる。

 そして、開かされた足の間に清文の確かな存在を感じた瞬間、予想以上の圧迫感が俺を襲った。

 押し広げ、ゆっくりと侵入してくる熱い固まりから逃れようと、俺はシーツを掴んで這い上がろうとする。
 逃げたいわけじゃないのに、身体が逃げたがる。

 けれど、それは清文に抱きすくめられることで未遂に終わり、更に深く、身体が繋がり始めた。

「…いた…い」

 そう言えば、清文は止めてくれるかも…ってちょっと思ったんだ。
 訴えなきゃいけないほど、痛くはなかったんだけど、実際は。

 でも。

「なーちゃん…ごめん。でも、やめない。俺が、なーちゃんのことしか思ってないこと、この身体にもわかってもらわなくちゃいけないから」

 清文の身体がさらに熱くなった。

「だからごめん。少しだけ、我慢して」

 そう言うと、清文はしっかりと抱きすくめていた俺の身体をグッと引き寄せた。

「……っ」

 声にならない叫びが喉を突いて、俺は身体を震わせる。

 ほんの一呼吸置いて、清文が動き始めた。
 ゆっくりと揺すられる俺の身体。

「…や、あ…んっ」

 恥ずかしいから黙っていたいのに、閉じることのできない口からはひっきりなしに甘ったるい声が漏れる。

「なーちゃん…」

 柔らかく囁かれて、身体が芯から溶け始めた。

 清文の動きが激しさを増してきても、もう痛みも何にも感じなくて、あるのはただ、行く先の見えない底知れずの快感ばかりで…。

 もう、ダメ…。
 そう思ったとき、低い、大人の声で清文が言った。

『理…、愛してる』と。

 きよふみ…、それ……反則だってば…。

 全身を震わせて達してしまった俺を、骨が折れそうなほど抱きしめる清文。

 俺の身体の中に、清文の熱い想いが溢れかえった…。




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