恋・爛漫

〜秋の章〜




 あの、わけのわかんない夜から1週間たった。
 あれから笠永くんには一度も会ってない。
 きっとお目当ての彼女の添乗先にでも張り付いてるんだろう。

 ホントに何で告白しないかな?
 めっちゃいい男で優しくて、思いやりもありそうだし頼りがいもありそうだし…って、何で俺がここまでヤツを誉めなきゃならんのだ。
 まったくもうっ、振り回しやがって。





 今日から俺は、2泊3日で京都を訪れる修学旅行の担当だ。
 一行は九州からやって来る中学二年生。
 新幹線のホームで出迎え、バスに分乗させる。

 最近は修学旅行も様変わりしていて、ゾロゾロとバスを並べ立てるような観光はあまりしない。
 数人でグループを作り、タクシーに乗せて、自分たちが決めたところをまわらせるのだ。

 贅沢なことだな、とは思うんだけど、この方が先生も楽で、なにより安全ならしい。
 数人に一人、必ずタクシーの運転手と言う大人がついているわけだから、途中でフケることもできないし…。

 だから俺たちの仕事も、そんなにきつくはない。
 ただ、ピーチクパーチクとやかましいから、声を張り上げるのに一苦労だけど。
 

 ついた初日はさすがに全員で観光だ。
 バスで二条城や平安神宮なんかをまわるんだ。
 団体でも余裕で行動できる広いところばかりだ。

 そして夕方、宿舎へ案内するわけだけど、俺は自分が添乗しているバスの中、ずっと一人の少年が気になっていた。

 その子は周りの同級生よりずっと大人びていて、綺麗な顔立ちをしているんだけど、すごく寂しそうに笑うんだ。

 友達もあれやこれやと話しかけているようだし、苛められてるとか嫌われてるとか言う気配は微塵も見えない。

 でも彼は、バスの外をずっと一人で眺めている。
 その瞳に、京の町の風景が映っているとは思えないんだ。

 何かを抱えてる…そんな気がした。

 それに、なんだかどっかで見たような顔なんだな…。
 うーん、気になる。
 気になるんだけど、俺の立場でとやかく言えるわけじゃなし…。
 


 そんなこんなで、どうにか180人ほどのガキどもを部屋に入れることに成功し、本日の仕事を終えてホッとしていると、俺が添乗してるバスに乗っていた先生、二組の担任である佐々木先生が声をかけて来た。

「海塚さん、ありがとうございました」
「あ、先生。お疲れさまでした」 

 先生は俺に、ロビーのソファーに座るよう促した。

「海塚さん、今日、静谷のこと気になさってましたね」

 へ?静谷ってだれ…?と、一瞬思ったのだが、俺はすぐに、それがあの子の事だと気がついた。

「あ…、あの、なんだか思い詰めた表情だったので」

 俺が言葉を選びながら言うと、先生は小さく『そうなんですよ』と言った。

「あの子…静谷行利(しずや・ゆきとし)は、この春までは、本当に天真爛漫で、人の輪の中心にいるような子だったんですが…」

 どうして俺にこんな話を聞かせるんだろう。
 俺はただの行きずりの添乗員にすぎないのに。
 こんな事話してかまわないんだろうか。

 俺がそんな疑問を巡らせていると、先生が俺の目をジッと見た。

「静谷は恐らく…明日のグループ行動には同行しないと思います」

 …嫌な予感が…。

「海塚さん、明日、静谷をお願いできませんか?」

 ほら来たっ。よくあるんだ。団体行動が出来ないからって、宿にほって行かれるヤツが。

 ただ、ほとんどの場合が『老人会』的な団体旅行の場合だ。修学旅行ではないだろう。
 だって、これって『教育放棄』になっちまうじゃん。

「先生、それは」

 そりゃあんまりじゃないかと言おうとしたら、先生が先手を打ってきた。

「静谷もあなたを見ていたんですよ」

 はぃぃ?

「あの子は誰が聞いても何も話しません。でも…あなたになら何か言うかもしれない…と」
「おれ…いえ、私は行きずりの人間ですよ」
「だからです」

 言い切られてしまった…。

 そりゃあ、あの子のことは確かに気にはなってる…。けど、だからといって…。






 悶々と一夜を明かし、俺は早朝から修学旅行の宿舎へ向かった。
 生徒たちはすでに食事にかかっていて、俺の姿を見ると挨拶してくれる。

 ふふ、中坊なんてまだ可愛いもんだな。
 これが高校になるとそうはいかない。
 小生意気なだけならまだいいけど、一ヶ月前なんか、とんでもないヤツらにあたった。

 男子高校の修学旅行だったんだけど、『今夜つき合ってよ』って言われたんで『私は酒も煙草もやりませんよ』って返したら、俺をニヤッと見おろして、『抱かせろって言ってンだよ』と来たもんだ。

 っとに、最近のガキときたら色気だけは一人前でやがる。
 冗談言うなら、もっとおもしろいこと言えってんだ。

 ま、こんな輩がいるから、男子校の添乗に若い女子社員はつけないんだけどね。
 俺だったら襲われる心配もないし。






「海塚さん」
「あ、おはようございます」

 声をかけてきたのは佐々木先生だ。
 隣にいるのは…静谷くん…。

「おはよう、静谷くん」

 そう声をかけると、彼は俯いていた顔を上げた。

「お、はようございます…」

 んー、この顔、どこで見たんだろう…。  
 
「海塚さん、静谷のことお願いします」
「あ、はい」

 そうは言ったものの…。

 俺、人生相談に関しては、この前の笠永くんでも懲りてるんだよな…。

「静谷、夕食後は親戚の方が面会に来られるんだろ?その時には元気な顔を見せてあげるんだぞ」

 おいっ先生そりゃないだろう。無理に笑えだなんて、あんまりだぜ。

「はい…」

 それでも優等生なのか、静谷くんは静かに返事をした。






「ちょっと雲行きが怪しいね」

 昼までは晴天だったのだが、午後に入って少し雲が出始めた来た。

 京都に赴任してから地元出身の子に教えてもらった話なんだけど、京都の天気には『稲荷参り』って言うのと『愛宕参り』って言うのがあるんだ。

 つまり、京都の中心から見て、東南方向にある『伏見稲荷大社』に向かって雲が流れていくと、天気は回復。
 反対に西北方向にある、火除けの神様『愛宕神社』に向かって雲が流れると天気は崩れる…って言うんだ。

 俺はこの話を聞いてから、時々空を見上げては一人で天気予報をしているんだけど、これが結構当たるんだ。
 まあ、雲の流れ的には科学的根拠ってものがあるんだけど、昔の人はよく言ったもんだと思う。 

 今日の雲は完全に『愛宕参り』だ。
 今夜から雨だろう。

 俺たちは、午前中はとりとめもない話をポツリポツリとしていた。
 昼食をとった頃から、静谷行利くんはだんだんと口を開くようになってきたので、こうやって宿舎から出て散歩をしているというわけだ。

 場所は円山公園。
 春ともなれば巨大なしだれ桜が話題になる超有名なスポットだ。もっとも俺は見たことないけど。

 静谷くんは、俺が京都の天気について講釈を垂れているのをジッと聞いていた。
 時々ニコッと笑う。うん、言い傾向だ。



「海塚さん…って、なんて名前ですか?」

 いきなりポツンと名を聞かれた。

「え?ええと、俺はゆきのりって言うんだ」
「千里(せんり)と書いて?」
「どうして知ってるの?」

 胸の名札には、社名のロゴの下に『Y.Umizuka』としか書いてない。

「先生に名刺渡したでしょ?」

 確かに。

「それ見たんだ」

 静谷くんは足元の小石をコンッとけっ飛ばした。

「でさ、『せんり』っていうのか、『ちさと』っていうのかどっちかなって。まさか『ゆきのり』だとは思わなかった」

「んー、いきなり読める人はまずいないな」

「だろうね。でも、僕たちの名前、まるで兄弟みたいに似てるよね。『ゆきのり』と『ゆきとし』って」

「そう言えばそうだね」

 わけもなく、なるほどと頷くと、静谷くんは俺に向き直って真剣な顔を作った。

「ね、行利って呼んでみて」

 そう言われて俺は素直にすんなりとその名を呼んだ。拒否する理由もなかったし。

「行利くん」
「じゃなくって、行利」
「呼び捨てでいいの?」
「もちろん」

 俺はその名を呼び捨てで呼んだ。行利…と。

「ああ…なんだか洗い流されたよ」

 え?何が?

「どういう…意味?」

 何だかとても大事なことのように感じたから、俺は聞いちゃいけないんじゃないかと思ったにもかかわらず…聞いてしまった。

「うん…」

 行利…は言葉に詰まった。
 やっぱりな。核心に触れるような話になってしまうのかもしれないから…。

「あのさ、うちの母さん、この春再婚したんだよ」

 あ…あああ、やっぱり。家庭の事情ってヤツだ。

「で、いろいろあって…。でも、今、千里さんに『行利』って呼んでもらえて、自分の名前が綺麗になったような気がするんだ」

 うー、これでこいつが立ち直るとか言う青春物語なら、俺は手放しで大賛成なんだけど、それにしてもあまりにも話が見えてこない…。

「ね、千里(ゆきのり)さん…。人を好きになるって、どんな気持ちなんだろう…」

 うわ〜。恋愛まで絡んでくるのかよ〜。

 まさか母親の再婚相手に惚れたとか言うんじゃないだろうな。あ…、相手は男か。なら大丈夫だ。とすると、再婚相手の連れ子が可愛い女の子だったとか…。

 その線、ありそうだな…。
 ふふ、俺って相変わらず鋭いじゃんか。

「そうだなぁ。ま、ドキドキしたりってのは当たり前だけど、その人のことが気になって気になって、すべてを知りたくて、でも、知っても知ってもまだ不安で…。結局、全部を自分のものにしたくなるんじゃないかな…」

 俺だって恋愛経験は著しく乏しいから何とも言えないけど。

「でも、それって酷くわがままじゃない。全部自分のものにしようだなんて」

 お、中坊のクセに、なかなかわかったような口聞くじゃんか。
 まあ、この中坊はむかつくことに、俺とほとんど背格好が変わらないんだけど…。

「人を好きになるって、もともとわがままな感情だと俺は思うけどな。あとはどこまでそのわがままを受け入れられるか…なんじゃない」

 行利はまた俯いてしまったんだが、それもほんのしばらくのことで、やがて思い切ったように顔をあげると…。

「僕、千里さんが好きだ」

 ………。

 おいっ、目が点になるようなこと言うなよ。

「千里さん、目が点になってる」

 あ、やっぱり?

「クスッ…。やだなぁ、本気にした?」

 な、何だ冗談か。中坊のクセに生意気だぞっ。

「あのね、大人をからかうんじゃないの」

 俺はちょっと、いや、かなり盛大にムッとしてみせる。

「本気だよ」

 いや、だから…。

「マジな顔して冗談言うんじゃない」

 俺はますますムッとする。

「冗談じゃないよ。僕、千里さんが好き。人を好きになるって、こう言うことだってわかった」

「君さ、男が好きなの?」

 思わず呆れた口調で聞いてしまった。

「………」

 彼、行利は何も言わずにまた俯き、今度は…。

「あっ、待てよっ!!」

 走って行ってしまった…。






 それから行利はちゃんと宿舎に帰っていた。ただ、俺にはもう、顔を見せてはくれなかったが。

 不用意なことを不用意な口調で言ってしまったと、俺は酷く後悔したんだけど、それにしても、大人をからかうのもどうかと思う。

 いや…もしからかっていなくて…、本気だとしても、それはそれで大いに困ることではあるし…。

 ぐったりと疲れた身体を引きずって、支店経由でやっと我が家へたどり着いた夜、俺の京都式天気予報は見事に当たり、時間を負うごとに雨足が強くなってきていた。

 何だか熱っぽいや。
 これは早めに薬飲んで寝た方がいいなと思いつつ、ネクタイを緩めたとき…。

 携帯が鳴った。会社からだ。

「はい、海塚です」
 
 電話で俺に告げられたのは、とんでもない事態の発生だった。

 俺は緩めたネクタイを結び直す間もなく部屋を飛び出し、全力で走ること30秒、四条通へ出てタクシーに飛び乗った。

 告げた行き先は・・・、行利がいるはずの宿舎だ。
   


『海塚くん、F中の佐々木先生から連絡があった。静谷と言う生徒が、夕食のあとから行方不明なんだそうだ。至急行ってくれ。こちらからも応援を出すから!』


 支店長の落ち着きつつも慌てた口調が脳裏に蘇る。

 俺はタクシーの中でも腰を浮かしつつ、宿舎へ電話を入れた。

 すぐに出てくれた佐々木先生の説明によると、夕食後、京都に住む行利の親戚…叔母と従兄だそうだが…が面会にやってきたらしい。

 行利がいないことに気づいたのはその時だったと言うことだ。


 俺は心臓のど真ん中に激しい痛みを感じていた。
 俺が昼間に傷つけてしまったせいだと思った。
 頼むから…頼むから無事でいてくれ…。

 雨は酷くなる一方だ…。



「佐々木先生っ」
 宿舎に飛び込んだ俺が最初に見たもの、それは…。

「ちさとさんっ」
「か…笠永くん…どうしてここに…」

 あれ以来さっぱりお目にかからなかった、笠永行範がそこにいた。
 傍には彼によく似た風貌の綺麗な女性。

「海塚さん、静谷の従兄さんと知り合いなんですか?」

 佐々木先生が目を丸くしているが…。

「えーー!笠永くんが、行利の従兄?!」

 そ、そうだ。誰かに似てると思ったのは…。
 こいつらよく似てるんだ。

 そう、笠永行範と静谷行利…。血が繋がってるんなら当たり前か…。


「ちさとさんっ、『行利』ってなんですかっ、僕の名前は呼べなくても、行利ならいいんですかっ」

 こいつ、何言ってんだ。この非常事態に。

「あのねっ、今はそんなこと言ってる場合じゃないでしょ!」

 俺は騒ぐ笠永くんを後目に、佐々木先生に説明を求め、そして行動に移した。

 彼、行利はたぶん…たぶんだけど円山公園にいるような気がする…。

 とにかく俺たち…先生たちや、笠永くん、そして応援にやって来た支店の同僚たち…は、懐中電灯と傘を手に、暗がりへ散った。


 俺は円山公園に向かったが、もちろん確証はなかったので、近所にある知恩院、八坂神社…など手分けして探すことにした。

 少し走っただけで、もうスーツはグショグショだ。
 雨は横殴りになりつつあった。
 しかも、このあたりは夜になると本当に真っ暗だ…。

「行利―!」

 俺が叫ぶと、後ろのヤツも叫んだ。
 ん?笠永くんがついてきているらしい…。
 でも、今はそれをとやかく言ってる場合じゃない。

 真っ暗な中、視界も激しい雨で煙っている。
 俺は懐中電灯だけを頼りに、円山公園の中を山側へ上がっていく。

 やがて、笠永くんの声も聞こえなくなった。
 この視界だ、見失ったんだろう。

 と…。すぐ側で『ザザッ』と大きな音がした。何かが激しく擦れるような音だった。
 まさか…。このあたりは足場が悪い…。

「行利っ?」

 そう叫んで、ややあって…。

 それは雨にかき消されてしまいそうな声だった。

「ゆきのり…」

 いた…。行利だ…。

 繰り返し俺を呼ぶか細い声だけを頼りに、俺は行利に近づいていく。
 行利は、背丈ほどの小さな崖を転がり落ちていた。

「大丈夫かっ?!」

 俺も滑り落ちる。
 ただ、覚悟の上の滑落なので、スーツがぐちゃぐちゃになる以外の被害はない。

「ゆきのりさん…来てくれたんだ」
「当たり前だろっ」

 俺は差し伸べられた腕をがっちり掴み、その身体を抱き込んだ。

「何で、何でこんな無茶を…」
「ごめん…僕、どうしていいかわかんなくなったんだ」

 それは…それは昼間の告白のことだろうか…。

「わかった。話は戻ったらゆっくり聞こう。ちゃんと二人きりで話せるようにするから…な」

 そう言ったが、行利は首を縦に振らなかった。

「今、聞いてっ。お願いだから、ここで聞いて」

 行利は驚くほどの力で俺にしがみついてきた。
 まわされる腕が、俺の身体だけでなく、心まで拘束しようとしているような気分になる…。

「わかった…わかったよ、行利」

 とりあえず俺は、しがみついて離れない行利を引きずって大木の根っこに腰を下ろした。
 どうせ二人とも、プールに飛び込んだも同然の濡れ鼠だ。かまやしない…。

「僕は、千里さんが好きだ」

 もう一度告げられたその告白を、俺は、今度こそ真っ直ぐに受け止めた。

「うん…。ありがとう。嬉しいよ」

 行利はさらにきつく、俺にしがみついてくる。
 はっきり言って、抱擁と言う感じはあまり…ない。

「僕ね…母さんの再婚で、義理の兄貴が出来たんだ」

 やっぱりね…。
 義理のあ………。

 あにきぃ? 

「お兄さん…とはね」

 俺が顔色を失っていても、行利は気づかないだろう。
 だって、きつくしがみついてて顔なんか見えやしないし。

「あいつ…僕のこと好きだって言うんだ。どうしようもないくらい好きだって」

 う…俺が思っていたのとは反対方向に…しかも、あまりよろしくない方に話は向かっているようだ…。

「夜中に部屋に忍び込まれてりして…何度も耳元で『行利』って囁かれて…僕は家に帰るのが恐ろしくなって、友達の家を渡り歩くようになった」

 それは…確かに怖い。めっちゃ怖いぞ。貞操の危機ってヤツじゃないか…。

「そっか…可哀相に…。そんなんじゃ親にも相談できやしないよな…」

 親どころか…誰にも相談できないぞ、こんな事。
 男に…しかも義理の兄に狙われてます…だなんて。

「こんな事言ったら、きっと母さんは僕を連れて家を出てしまう…。僕は…母さんがせっかく掴んだ幸せを壊したくなかったんだ…」

 俺の首筋に埋めた行利の唇から嗚咽が漏れだした。

「行利…お前って…優しい子だな…」

 俺は行利を思いっきり抱きしめた。可愛くて、可哀相で仕方がなかったんだ。

 しばらく行利は嗚咽を漏らしていたが、やがてふと顔を上げた。

「でも、僕、京都へ来て、お兄さんの気持ちがわかった…。わかってしまった」

 その真摯な瞳に、俺は…飲み込まれそうになったのだが…。

「人を好きになるって言うこと…。どんな気持ちで、どんなに苦しいかわかってしまったんだ」

 あのー、それって俺のことでしょうか…?

「好きな人の名前を呼ぶと、どんなに幸せな気持ちになれるかわかったんだ。それに…好きな人に自分の名前を呼んで欲しいってことも…」

 俺…続きを聞くのがコワイんだけど…。

「僕、千里さんが好きだ。全部知りたくて、全部欲しいと思ってしまった。昨日会ったばかりの人なのに、千里さんのすべてが欲しいと思ってしまったんだっ」

 お、俺のすべて…。ももも、もしかして…。

「千里さんの心も、身体も、全部欲しいっ」

 熱烈な告白を受けて、俺は目を回した。
 身体から、力が抜けていく〜。



「ちさとさんっ」

 何だか遠くに、ホッとするような、大好きな声が聞こえた気がしたんだけど…。



「最終回」へ
 

ご旅行で京都に来られる皆様へ

桜の季節の円山公園は、深夜でも強烈な人出です(笑)
それ以外の季節は、場所によっては(特に山側。円山公園はとても広いのです)
夜はとても寂しいので、日が暮れてからの女性だけの散策は避けられた方が
いいと思います(*^_^*)
山とは反対側に行くと、八坂神社へ抜けます。そして石段をおりると・・・。
葵くんの育った祇園です(笑)
以上、桃の国的京都観光案内でした(^^ゞ