君と、LoveLoveLove
「君と幸せになるために」から半年後の二人
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「これが…僕の部屋…?」 「そうさ、これが陽日の部屋。東南の角だから明るいぞ」 2方向にある天上から床までの『掃き出し窓』は、これでもかというくらいに温かい日差しを呼び込む。 「でも、言っておくけど、これはあくまでも勉強及び仕事部屋だ。寝室は隣。その向こうは俺の部屋だ。もちろん3つの部屋は繋がってるからな」 『もちろん』という部分をわざわざ協調して岳志が言う。 それは構わないのだが…。 「岳志、もしかしてこの家…」 「買った」 あっさりとそう言われて、陽日がガクッと肩を落とす。 「どうしてそんな無茶を…」 「無茶なもんか。俺は、お前を見つけたときのために高校の学資を貯めてたんだからな。 高校へ行かなくても大学が受験できるのなら、その分丸々浮いたわけだ。家ぐらい買えるさ」 そう力説されて、一瞬陽日は『そうか』と思ったのだが…。 「あのね、岳志。高校の学費くらいで家が買えるわけがないでしょ」 その通りだ。 「つべこべ言うな。そうそう、この家には佐上さん専用の客間もあるからな」 「え?ほんと?」 「当たり前だろ? いつ顔出してもらってもくつろいでもらえるように、専用のバスルームつきだ」 「岳志…」 潤んだ瞳をあげて、陽日は言葉に詰まる。 でも漸く、小さく「ありがとう」と告げる。 その言葉に、岳志は微笑みと優しい口づけを返す。 二人が本当の意味での再会をはたしてから約半年が過ぎ、今日、陽日は勲の元を離れ、岳志のところへやって来たのだ。 「お前にとっても俺にとっても、佐上さんはかけがえのない人だからな」 岳志の言葉に、陽日は頷いてしがみついた。 |
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「ん…・」 初めて使う、慣れないシャワールームに戸惑っていると、岳志が入ってきてそのまま体を洗われてしまった。 そして、そのままバスタオルにくるまれて、二人の部屋の間にある寝室へやって来た。 二人でもまだ十分にあまるベッドの真ん中で、二つの影が重なる。 「んん…っ」 耐えるように声を絞る陽日に、岳志は少し震えた声で言う。 「陽日…辛いか…?」 岳志が右手の手術のために入院する前日…その時以来約3年間、誰も受け入れることのなかった陽日の全身は、緊張に固く強張っている。 そんな陽日自身の熱をゆっくりと育てながら、岳志は慎重にその身体を拓こうとする。 「だいじょ…うぶ」 「やめようか…?」 「や、だ…。たけし…続け…て」 心は受け入れようとしているのに、それに付いてこない身体。 陽日はポロッと一つ、涙を零して岳志に訴えた。 「やさし…くなくていい…。は、やく、岳志のものにして…っ」 細い指が岳志の背に食い込む。 「陽日、心配しなくていいから…。お前はもう、俺の…俺だけのものだから…」 言葉ではそう優しく宥めるのだが、しかし、実際岳志の我慢も限界に近づきつつある。 あれから半年。 岳志ははやる心を無理やり押さえつけ、陽日を迎える今日まで耐えた。 勲の元にいる間は、陽日を抱かないと決めていたのだ。 遠慮をしたというわけではない。 勲と陽日の間に、『そういう関係』はなかったというのもよくわかっている。 それは、陽日の口からも聞いたし、まして、二人の様子を間近で見ていれば容易に知れることだ。 だが、いや、だからこそ岳志は、勲の元にいる陽日には触れられなかった。 それは陽日を宝物のように慈しんでくれた勲に対する岳志の、せめてもの『けじめ』だったのだ。 「まさひ…」 吐息ごと絡めるように深く唇を合わせながら、岳志は陽日の腰を抱き寄せた。 少し強引に指を潜り込ませると、更に身体の緊張は増してしまう。 その様子に、岳志は初めて陽日を抱いた時を思い出す。 あの当時、陽日はまだ15歳。 一緒に暮らし始めてから、半年ほど経ったときのことだった。 「陽日はまた、まっさらになって俺のところに戻ってきてくれたんだな…」 聞かせようと思ったわけではない呟きだったが、静かな寝室で、それは囁きとなって陽日の耳をくすぐった。 「たけし…?」 「もう、何処へも行かせない。俺たちは、一生、二人で一つだ…」 その言葉に陽日が頷くのを見届けると、岳志は再び陽日の身体を緩めていくことに専念し始めた。 陽日は、半ば強引に引き出されていく快感に、ギュッと瞼を閉じる。 片足を肩に担ぎ上げると、陽日の喉が小さく啼いた。 「陽日、目を開けて…」 ギュッと閉じられ、隠されてしまった瞳が見たくて、岳志はそう言った。 やがて、そっと、震えながら開かれる瞳。 それは何よりも鮮やかな艶を帯びて岳志の胸を射抜いた。 「愛してる…っ」 「…っ…あ、…あぁ…っ」 「まさひ…まさひ…」 幾度とも果てることなくその名を呼び、岳志はさらに強い繋がりを求めて陽日の奥を目指す。 それは初めての時のように、狭く、きつく岳志を締め付けるが、身体も心もこの繋がりをしっかりと覚えていた。 「たけ…し…」 小さく名を口にした陽日の身体から、フッと力が抜けた。 「たけし…だ…。僕の…僕だけの…たけし…」 陽日は、再び手に入れた愛しい者のぬくもりにすべてを委ねるため、自らを解放した。 漸く汗の引いた身体を横たえ、それでも岳志は飽くことなく陽日を抱きしめて、その髪を静かに梳く。 「俺は、自分勝手なんだ…。自分が幸せになるために、陽日を手に入れた。 お前は自分の幸せよりも俺の幸せを先に考えてくれたって言うのに…」 岳志は、ずっと胸の奥に燻ってきた思いを、素直に口にしてみる。 「岳志…」 「本当に陽の光のように温かくて優しい、陽日。俺なんかにはもったいない…」 「それは違うよ…」 陽日の首筋に埋められた岳志の顔。 耳や首にキスを受けながら、今度は陽日が岳志の髪を柔らかく梳く。 「まさひ…?」 「僕に、この気持ち…こんなにも人を愛することができるってことを教えてくれたのは岳志だから…」 「陽日…」 岳志は顔をあげ、陽日の額に一つ、小さなキスを落とす。 そして、この上なく真摯な瞳で告げる。 「そして、そんな陽日の気持ちを大きく強く育ててくれたのは、佐上さん…だ」 「岳志…」 「陽日…幸せになろう…。お前がいつまでも笑顔でいられるように…」 陽日は陽の光。 いつまでも輝く、幸せの光。 |
END |
『君と幸せv』も読む?